体験場所:北海道札幌市中央区
私が札幌市の中学校に通っていた頃の話です。
当時、私はバドミントン部に所属していて、土日も部活動で学校に通う日々を過ごしていました。
土日の部活は午前の日と午後の日があったのですが、午後の日は終わるのが大体15時くらいなので、部活後は仲の良かった友人のA子とB子とC子、それと私の4人で、遊んでから帰宅するというのがいつもの流れでした。
その日も、部活帰りにいつものメンバーでA子の家に遊びに行きました。
A子の家は、7階建ての白いマンションの5階にあって、4人の中では一番学校から近かったので、帰りに遊びに行くのは主にそこでした。
もはや通い慣れたA子の家に到着すると、いつも通り各々自由にくつろいで遊んでいました。
すると、A子のお母さんが帰宅するなり「部屋を掃除するから外で遊んできて!」と言われ、私達はしぶしぶ外に遊びに行くことになったんです。
エレベーターに乗り込み、たわいもない話をしていると、
「お金欲しい~!!」
と、B子が言い出しました。
「1万円落ちてこないかなぁ~」
と、冗談でA子がそれに乗ると、
「いや、5千円でもいいよねぇ~」
と、C子もふざけて言います。
「千円で…」
「いや500円でも…」
と、次の誰かが便乗する度に、だんだん金額は減っていき、ちょうどエレベーターが1階に着いたタイミングで、
「5円でもいいや~」
と、節操ない話の割にせこい金額に至る自分たちを笑いながら、私達は1階フロアに降りて行きました。
外で遊ぶといっても、公園に行くとかではなく、マンションの前の道路で追いかけっこしてみたり、ふざけあったりしているだけでしたが、何をしてても楽しい年頃でした。
そんな風にキャッキャキャッキャと4人で戯れて遊んでいると、まだ外に出てからそんなに時間も経っていなかったと思います。
『チャリン♪』
と、お金が落ちたような音が聞こえました。
私たちはふざけてじゃれあって遊んでいたので、その拍子に誰かが持っていたお金を落としたのだと思い、みんな我先にと音がした方へ駆け出しました。
1番最初にお金を手にしたのは、エレベーターで「お金欲しい!」と言い出したB子でした。
「イエーイ!5円拾ったー!」
と、B子はふざけながらも、
「で、誰の5円なの~?」
と持ち主を探し始めます。
すると、
『チャリン♪』
と、またお金が落ちる音がしたのです。
また誰かが落としたんだと思いながら、音のした方を確認すると、また5円玉が落ちているのです。
「また5円だよ~!」
とはしゃぎながらも、4人のうちの誰かのお金のはずですので、当然「…誰のかな?」という話になります。
でもみんな、「私じゃない」、と言うのです。
それもそのはずで、私たちの学校はお金の持ち込みが禁止されていました。
だから、学校指定ジャージを着た部活帰りの私たちが、お金なんて持っているはずがないのです。
(でもそんなわけない。絶対この中の誰かが落とした5円玉のはず…)
私も、お金を拾ったB子も、A子もC子も、みんなそう思ったはずです。
「ねー誰の?誰のさー?誰の5円なの?」
C子がいい加減にしろとばかりにそう言った瞬間、
『チャリン♪』
と、また音がしたのです。
4人とも同じ場所にいて、それぞれがそれぞれの様子を見ていました。
だから、今回落ちてきたのは、4人の中の誰のものでもないことは明白でした。
「…チャリン♪って…みんな、聞こえたよね?」
そう言いながら、恐る恐る4人で音がした方に行くと、そこにはやっぱり5円玉が落ちているのです。
私達もだんだん気味が悪くなってきて、1番最初に5円玉を拾ったB子が真剣な顔で、
「ねーもう!誰のさー?ふざけてないで言ってよ!誰の5円玉なの?」
と言った瞬間、また、、、
『チャリン♪』
と聞こえたのです。
もう一気に全身が総毛立ちました。
B子は持っていた5円玉を投げ捨て、私達はキャーキャー悲鳴を上げてA子の家に走って戻りました。
転がり込むように家に上がると、
「あんたたち、何わーきゃー大きな声で騒いでたの?」
と、A子のお母さんが言います。
今あったことを説明すると、
「誰かのいたずらじゃないの?あんたたちが騒いでるから、面白がってマンションの上から落としている人がいたんじゃない?」
とA子のお母さんは言うのですが…
誰かのいたずら?それにしてはタイミングが良すぎる。
必ず誰かが、「誰の5円?」、と聞いた瞬間、次の5円玉が落ちて来るんです。
周りに私たち以外に誰もいなかったし、私たちの会話を正確に聞けた人なんかいませんでした。
ましてやマンションの中の住人の仕業なんて絶対に有り得ません。
実際にそんな現象を目の当たりにした私達には、それが人の成せる業とは到底思えませんでした。
それでも、考えたところで原因など分かるはずもなく、特にその後なにか起こることもなかったので、徐々に落ち着いてきた私達は、
「あの時「誰の5円?」じゃなくて、「誰の1万円?」って言ってれば良かったね~」
と、結局のところ笑い話になったのですが…
でも、本当に何だったんだろう?
未だに謎な出来事です。
コメント