体験場所:大阪府大阪市内の公園
これは、私が小学校低学年の頃に体験したお話です。
当時、私は大阪市内にある下町に住んでいました。
クラスメート達との遊び場は家の近所にある公園でした。
いたって普通の公園でした。
ブランコやジャングルジム、それに鉄棒や砂場なんかもある、本当にどこにでもあるような月並みな公園でした。
ただ、トイレだけがなかったのです。
だから、私たち児童はトイレに行きたくなると、公園が管理する掃除道具入れコンテナの裏っ側に行って、おしっこをしていたのです。
大人たちからは「おしっこをしたくなったら直ぐに帰りなさい」と言われてましたが、私たちはそれに構わず、その掃除道具入れコンテナの裏っ側を、仮トイレとして使っていたのです。
ある時、その仮トイレから、1人の女の子が居なくなったことがありました。
夕方になっても帰ってこないとその子の親から連絡があり、うちの親も一緒に探したくらいです。
結局、女の子は発見されました。
発見された場所は、その仮トイレでした。
「今までどこにいたの?」
と、その子の親や学校の先生が問いかけるも、
「ずっとここにいた。男の人と一緒だった。」
と女の子は言うのです。
周囲の大人たちの困り果てた顔を見て、本人も酷く混乱しているようだったと聞きました。
女子児童だったこともあり、
「その男から何かイタズラされたのでは?」
大人達はそう思ったそうです。
そんなこともあって、私も親から、
「あの仮トイレには絶対に近づかないように」
そう釘を刺され、私もそれを守ろうと誓ったのです。
それから数日後、私は変わらずその公園でクラスメート達と遊んでいました。
すると1人の男の子が、
「おしっこ行ってくる」
そう言って、例の仮トイレに向かいました。
私は親に言われていたこともあったので止めに入ったのですが、
「俺、ビビリじゃないし!」
と、その男の子は1人おしっこへと向かって行ったのです。
数分後、男の子は砂場へ帰ってきました。
「何もなかったで」
と男の子は平気な顔で言いました。
(やっぱり、大丈夫なんだ…)
そう思って、私もおしっこをしに仮トイレに向かいました。
仮トイレに着き、しゃがんでパンツを下ろそうとした時でした。
「お嬢ちゃん、ここでおしっこしないで」
どこからともなく、そう口にする男の人の声が聞こえてきたのです。
私は怖くて振り向くことも出来ず、おしっこするのを止め直ぐに砂場へと逃げ戻りました。
「おしっこしたん?」
砂場へ戻ると、さっきの男の子がそう聞いてきたので、
「何か声が聞こえてきて、やめた。」
そう返しました。
するとその男の子は、
「俺がしばいたる!」
と息巻いて、ズンズンと仮トイレに向かって行きました。
(あ、まずい…)
私は心配になったのですが、結局、仮トイレには誰も居らず、私の勘違いということで終わりました。
その後、私も成長して塾などへ通うようになり、次第にその公園に行くこともなくなってきた頃、私の一家は引越しが決まり、その街を離れることになりました。
それから随分時が経ち、私も大人になってからのことです。
仕事の用事ができ、昔住んでいたその地域を訪れる機会がありました。
懐かしいな~なんて思いながら仕事の合間に街並を見て回り、例の公園にも足を伸ばした時でした。
公園の片隅に見覚えのないものが建てられていることに気が付きました。
それはどうやら墓碑のようでした。
「慰霊」と書かれてありました。
私が住んでいた頃にはなかったはずです。
(なんだろう?)と思って、近くにあった交番で聞いてみたところ、驚くべき話を聞かされたのです。
当時、子供たちがトイレとして使っていた掃除用具入れコンテナの裏で、男の子が一人行方不明になり、その後、遺体で発見されたそうなのです。
しかも、詳しく話を聞くと、どうやらその男の子というのが、あの時、私が砂場で一緒に遊んでいた、あの男の子のことのようなのです。
「俺、ビビリじゃないし!」
「俺がしばいたる!」
そう言って、私に凄んで見せたあの男の子。
あの子が、首を絞められ亡くなっていたと言うのです。
不審者の情報も多数寄せられたそうなのですが、結局犯人は分からず終いで、時効を迎えたことで慰霊碑を建てるに到ったそうなのです。
あの子は私が引越した後も、あの公園で遊んでいたのでしょうか…
「お嬢ちゃん、ここでおしっこしないで」
そう言って、私に声を掛けてきた男。
もしかしたら、その男が犯人なのでしょうか…
私はそっと慰霊碑に手を合わせるしかありませんでした。
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