【怖い話|実話】短編「猫は人を恨むでしょう」人間が一番怖いと思った話(埼玉県)

人を恨む猫
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投稿者:しもとっぷ さん(20代/男性/専業主夫)
体験場所:埼玉県S市 自宅から職場までの通勤中

私の自宅は埼玉県秩父の山間にある田舎町で、数少ない民家が集まって住宅街を作っています。

ある冷え込んだ冬の朝のことでした。
外は寒く雪が降っておりましたが、それでも気を付ければ普通の靴でも歩けるくらいだったので、積雪は10センチ程度だったと思います。

その日、私はいつも通りに出勤するために、窓が全て雪で覆われた車に駆け込むように乗り込んで、窓の雪をヒーターで暖めて溶かすためにエンジンを掛けました。

車の窓は全て氷や雪がこびりついていて、窓の向こう側はよく見えません。
すると突然、

「にゃ”--!!!!」

という、なかなか普段聞くことのないくらい、大きくけたたましい猫の鳴き声が聞こえ、私は思わず驚きました。

エンジンが動く際に、猫が車の何かに巻き込まれたのかと最初は冷や汗が出ました。
ですが、後ろを振り返ると、雪と氷に覆われたリアガラス越しに、車の下から出てきた猫のような影が見えたのでホッとしました。
単にエンジンがかかる音にビックリしただけなのだと察しました。

寒い季節になると、決まって私の車の下に入って寒さをしのぐ野良猫が居るのです。

早く車内を温めたかったので、その猫にはちょっと悪いですが、危ないので逃げてもらう為にもアクセルを踏んで『ぶぅうおおーーん!!』とエンジンを空ぶかししました。

すると後ろで微かに『シャカシャカッ』と猫が走るような音がしたので、ちゃんと逃げてくれたのだと安心しました。

しばらくすると車内も暖まり、フロントガラスにこびりついていた氷も溶け、ワイパーも動いて視界がハッキリ開けてきました。

発車の準備が整ったので、車を走らせ職場に向かいます。
ゆっくりと安全運転でしたが、田舎道なので信号などで止まることなくスムーズに車は進み、20分程で職場に到着しました。

駐車場に車を止めようと一旦車を停車させようとすると同時に、同僚の佐藤さんが駆け寄ってきて、

「ちょっと!!!!なにしてるの!!!待って、止まって!動かないで!!」

と、急に怒鳴りつけるような大声で言ってきたのです。

私は驚いてブレーキを踏んで止まりました。
何事かと思いそちらを見ると、佐藤さんは降り注ぐ雪を気にも留めず、車の後方で地面にある何かを凝視しています。
運転席からは死角になっていて佐藤さんが何を見ているのかよく分かりません。

私は車から降り佐藤さんに駆け寄りました。

「い、いったい何があったんですか?」

「こんな…信じられない…誰が、こんなことを…」

震えるように声を絞り出す佐藤さんが見つめる先に目を向けると、

そこにあったのは赤黒い塊でした。

赤黒い塊
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一瞬それが何なのか分かりませんでした。
食べ終わったフライドチキンみたいな骨のような物も混じる赤黒い塊。

「まさか…これって…」

雪空の外気とは異なる寒気を感じました。

その赤黒い塊は、ロープで私の車に繋がれていました。
私は車を走らせている20分もの間、ずっとこれを引きずっていたのです。

私は佐藤さんと目を見合わせました。
他の同僚や上司も集まり大騒ぎになったのですが、その後はよく覚えていません。

ロープを切り離した後、放心したまま私はそれを自宅まで持って帰りました。

そのまま『いつも私の車の下で寒さをしのいでいた猫』のお墓を建てました…

私はしばらく茫然自失としていましたが、そのままでは気持ちが落ち着かず、ペットの葬儀を手がけている業者に依頼して、車と私や家族、家をお祓いしてもらい、お墓でお経を読んでもらって供養しました。

今思い出しても、ゾッとして冷や汗が止まらなくなります。
ロープで車に括り付けられた野良猫を、私の運転で市中を引き回していたなんて・・・

市中を引き回して…
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猫は人を恨むでしょう。

正直それも怖いのですが、こんな悪質で残虐極まりない行いをする人間が実際に居ることが、一番の恐怖でした。

そしてその人間が今もまだ、この山間の田舎町のどこかで平気な顔で暮らしているのかもしれないのですから…

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