【怖い話|実話】短編「ナンジャモンジャの木」不思議怪談(愛知県)

【怖い話|実話】短編「ナンジャモンジャの木」不思議怪談(愛知県)
投稿者:栗ようかん さん(40代/女性/接客業)
体験場所:愛知県A市

私がまだ小学生の頃の不思議な思い出です。

春休み、私は家族に連れられて父方の祖父の家に遊びに来ていました。

都市部を外れ、駅からも遠い祖父宅の周辺は、ほぼ田んぼや畑ばかりで、買い物したり遊んだりするようなお店も無く、のどかな田舎という風情です。

滞在して数日ですっかり退屈してしまった私は、少しだけ近所を散歩してみることにして、昼寝中の家族を置いて一人きりでそっと家を出ました。

といっても、周りは田畑か住宅しかない土地なのですが、数分歩いた場所に小さな神社があることを覚えていたので、何となくそちらへ向かうことにしました。

お正月に一度家族で訪れたことのあるその神社は、記憶よりずっと小さく、賑やかだった年始の雰囲気とは全く違って、境内はしんと静まり返っていました。

鳥居をくぐって苔むした石畳をブラブラしたあと、子供ながらに一応お参りの真似事だけはして、もと来た石畳の道を歩いて戻っていると、道の脇に真っ白な花をはらはらと散らす小さな木が、昼下がりの光に照らされて綺麗に佇んでいました。

こんなに綺麗な花を咲かせているのに、来た時の自分は気付かず通り過ぎていたのかと、不思議に思い立ち止まって眺めていると、不意に後ろから「その木はナンジャモンジャの木と言うのですよ」と声がしました。

振り向くと若い男の人が立っていました。

よく分からないけれど和装だからここの神社の人なのかなと、しばらく会話を交わしてから鳥居を出て帰宅しました。

なぜかその時の会話は白昼夢のように靄のかかった記憶なのですが、初めて聞く木の名前がやたらと面白くて印象に残り、春休みが終わると図書館に行って図鑑を調べ、なるほど春に咲く植物なのだなと学んだのでした。

それは「身近な木の名前を新しく1つ知った」という単純な思い出として、意識することもなく通り過ぎるような記憶だったのです。

それから数年後、祖父が他界した時のことです。

お葬式が済んだあと、祖父宅のご近所の神社にもお参りに行っておこうかということになり、再び家族であの神社に行くことになりました。

神社に着くと「面白い名前の木があるんだよ!教えてもらったんだ!」と家族に言って、私は意気揚々とナンジャモンジャの木を探すのですが、それがどこにも見当たりません。

確かに木があったはずの鳥居の近くには、なだらかな苔が生えています。

「あれ~?おかしいな~?」と私は困惑しつつも、家族でお参りを済ませていると、「こんにちは」と神社の方が声をかけてくれました。

何も知らない子供でも神社の人だなと分かる和装の年配男性でした。

でも、それは数年前に私に声をかけてくれたあの人の服装とは全く違っていました。

あの時の若い男性の和装姿は「神社で普段働いている人」のそれとは全く違うことに初めてそこで気付いたのです。

幼い自分は、それが小さな神社で普通に見かける服装ではないということにも気付かずに、何の違和感もなく数年の間ずっと「神社で働く人」に会ったのだと思っていました。

大人だったらきっとすぐにその違和感に気が付いていたはずです。

それからしつこいくらい神社の方に木のことを聞きましたが、その神社にナンジャモンジャが植えられていたという記録はありませんでした。

今でも春にナンジャモンジャの木を見るたびに思い出します。

なぜあの時あの場所でナンジャモンジャの花を見たのか、何かしらの意味があるのではないかと、大人になってからも何度も何度も考えますが、本当に何も「不思議な人が木の名前を教えてくれた」以上の意味を見いだせないでいます。

特にその体験で良い事があったということも無ければ、過去にその木や神社にまつわる曰くを見付けることもできませんでした。

オチが無くて申し訳ありません、でも意味も理由も見つけられないからこそ、ずっと宙ぶらりんな気持ちのままで、誰かに聞いてもらえたらと思いお話ししました。

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