体験場所:滋賀県守山市
これは、私が小学生の時に体験した忘れられない出来事です。
ある日、授業中にトイレへ行きたくなった私は、先生に「お腹が痛い」と言って、教室を抜け出してトイレに向かいました。
小学生だった当時の私にとって授業中にトイレに行くことは、どことなく恥ずかしい事だったのだと思います。教室のある2階にもトイレはあったのですが、私はなんとなく教室から離れた1階のトイレへ行くことにしました。
1階には保健室もあります。もし誰かにトイレに入るところを見られたら「保健室に行ったついでだと言おう」と、誰に対してなのか、何のためなのかも分からない言い訳を用意しながら、私は廊下を急ぎました。
1階のトイレに到着すると、一番奥の個室のドアが閉まっていました。
「私の他にも授業中にトイレに来る人がいたんだ」と、私はその見知らぬ誰かに対して妙な親近感と安心感を覚えました。
けれど、同時に不思議な胸騒ぎがしたのです。
その個室の中にいる誰かが、私の妹ではないかという気がしてならないのです。
でも妹の教室も私と同じ2階にあるから、トイレに行くなら2階だろう。それにそもそも授業中の同じタイミングでそんな偶然あるわけないと思い直しました。
それでもなぜか胸の高鳴りは止まらず、私は勇気を出してドアの向こうにいる誰かに声を掛けてみることにしました。
私が、妹の名前を呼ぼうとしたその時です。
ドアの向こうから声がしました。
「・・・〇〇(私の名前)?」
――その声は間違いなく、妹のものでした。
私たちは驚くと同時に自然と笑ってしまいました。
「びっくりした!」
「でも、絶対〇〇だと思った」
「私もだよ!」
授業中のトイレというシチュエーションで、そんな不思議な会話を交わした後、私たちはそれぞれの教室に戻りました。
帰宅後、私は妹に「どうして1階のトイレに行ったの?」と改めて尋ねました。
すると妹の答えは、「2階はなんとなく恥ずかしかったから」と、私と同じ理由を答えた後、「でも、後からトイレに入って来た人が絶対にあなただと分かった」と言うのです。
同じタイミングで同じ理由で同じトイレを使い、しかも互いに互いのことを直感的に察知した。つまり同じ感覚を共有していたのです。
ここまでの話でお気付きかもしれませんが、私たちは双子です。
よく「双子には特別な心のつながりがある」と言われますが、当時のこの不思議な体験を通じて、確かに私たちにもそんな力があるのだと感じました。
あれから40年以上が経ちますが、今でも、私たちは遠く離れていても、まるでテレパシーのようにお互いの気持ちや状況が分かることがあります。
双子の絆はきっと生まれる前から存在し、そしてこの絆はこれからも私たちにとって大きな支えになると感じています。
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