体験場所:海外(ニュージーランド)ダニーデンのホテル
10年ほど前、ニュージーランドに留学していた時、そこで知り合った中国系の男性から聞いた話です。
彼は中国からニュージーランドに旅行で来ていました。
お金持ちのボンボンだった彼は、国内一周の周遊プランを立て、目ぼしい観光地を転々と回っていたそうです。
英語力も優れていた彼の旅は、大きな問題もなく楽しく進んでいたそうです。
そんな彼が、最南端の街、ダニーデンに着いた時のこと。
何かの手違いでホテルがブッキング出来ていなかった彼は、そこに住む友人を頼って古いホステルを取ってもらったそうです。
そうしてなんとか宿泊場所も確保できたので、彼はそのホステルを拠点に、その街で3日間過ごす予定を立てたそうです。
しかし、そのホステルに泊まった初日の夜のことでした。
彼がベットに就いてウトウトとしていると、奇妙な声が聞こえてきたそうです。
「Can you hear me?(聞こえる?)」
若い男の声です。
(妙な夢だな~)
最初はそう思っていた彼でしたが、どうやら声は夢ではなく実際に聞こえているようです。
「Can you hear me?」
「Can you hear me?」
耳元でずっと聞こえ続ける誰かの声。
(ああ、これが幽霊ってやつか。)
普通なら恐怖でガクガク震える状況ですが、変に肝の据わっている彼は、
(まあいいや。別に無視しよう。)
と、そのまま眠りに就いたそうです。
それから数時間が過ぎた夜中のこと。
彼は喉の渇きで目が覚めました。
先ほどの声は止んでいました。
水を飲みに行こうかとウトウト考えていたその時、
『ボス、ボス、ボス』
と、彼の目の前で、枕が3回チョップされたような形で凹んだのだそうです。
(え?なんだよこれ?)
多少気味悪く思ったものの、それでも直接的な害があるわけでもなく、やはり肝の据わってる彼は、
(うっとうしいなぁ~)
という程度で、そのまま無視して再び眠りに就いたそうです。
2日目の夜も、再び同じような現象に見舞われたそうですが、彼はガン無視を続け、そのままチェックアウトの朝を迎えました。
(このホステル、値段の割には結構よかったな。)
図太い神経の彼は、奇妙な現象に見舞われながらも、そんな事を思いながら荷物をまとめていたそうです。
すると、
「Hey,Don’t ignore me man.(よおお前、無視するなよ)」
クリアな声が背後から聞こえました。
「え?」
っと振り向く暇もなく、彼の着ていたフードが後ろに引っ張られました。
バランスを崩し尻もちをついた彼は、すぐに後ろを振り返りましたが・・・そこには誰もいません。
一気に冷や汗が出てきます。
「…ここは…ダメだ。」
直接攻撃を加えられた上に、どうやら相手は怒っている様子。
さすがの彼も肝を冷やし、荷物をまとめることなく適当にトランクに詰め込み、転がるようにそのホステルを後にしたそうです。
「あそこには得体の知れない何かが絶対にいる…」
彼は青い顔でそう言いました。
「そのホステルには、何かいわれがあるの?」
と私が聞くと、なにぶん外国の地のことなので分からないと言った後、
「と言うか、知りたくもないよ…」
と、彼は言っていました。
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