【怖い話|実話】短編「犬の影」不思議怪談(香川県)

投稿者:あや さん(29歳/女性/主婦)
体験場所:香川県高松市の自宅

私がまだ6歳の頃、両親と妹と4人で座敷に布団を並べて川の字に寝ていた。

私には小さい頃から霊感のようなものがあり、幽霊と呼ばれるものを何度か見たことがあったのだが、この頃は特によく見ていた気がする。
それは普通の人と見間違うことも度々あったくらいだが、特に怖い思いをしたことはなかった。

けれど、この夜の事は今でも鮮明に覚えている。

いつも通り4人で並んで寝ていると、ふと夜中に目が覚めた。

時刻は分からないが、両親も既に寝付いていたので、ある程度遅い時間だったのだろう。

私は寝付きがよく、一度寝たら朝まで起きないのだが、この夜はなぜか目が覚めた。

トイレに行きたくなったわけでもなく、どこか体の調子が悪いわけでもない。

少しの間、布団のなかでもぞもぞと動いていたら、廊下がぎしりと鳴った。

父が幼い頃から住んでいる古い家だった為、音がするのは珍しい事ではなかったが、その時の私は変にぎくりと胸が騒いだ。

ぎしり、ぎしり、足音のように聞こえるそれは、まるで廊下を歩いているようで、怖くなった私は隣の母を揺さぶって起こそうとした。怖くて声が出せなかった私は、揺さぶることしかできなかったのだが、母は起きてはくれなかった。

廊下の方に目をやると、障子に影が映った。

障子に映る犬の影
mage photo

犬のような影だ。

数匹の、ドーベルマンのような細い犬のような影が、ぼんやりと障子に映って動いている。

その間も、ぎしり、ぎしり、という足音は絶えず聞こえてくる。

不思議に思ったのは、足音は1人分、それも人間のものだった。

怖くてすぐに布団をかぶったが、そういえば障子に映る影は庭に向かっているように見えた。

庭では犬を飼っていた。

私は庭で飼っている犬のことが心配になり、もう一度母を揺さぶって、今度は少し大きな声が出せた。

「お母さん、起きて!」

すると、母が寝たまま急に両腕を振り回し始めた。

両腕を振り回す母親
mage photo

ぶんぶん、ぶんぶん、と母が腕を振り回すと、足音が止んだ。

すると今まで感じていた怖い気配もなくなり、障子に映っていたドーベルマンの影も消えていた。

「お母さん?」

泣きそうになりながら母に声をかけるが、母はやっぱり寝たままだった。

どう言うわけか、私はそのあとすぐに眠りについた。

翌日、母に昨晩の事を伝えても、何も覚えていないとのことだった。

それから何年も過ぎ、家も引っ越し、私も大人になって結婚した。

結婚前、主人を連れて実家で食事をし、昔の話をしていると、流れであの夜の話になった。

「あれは怖かったな~」

と私が話すと、

「あぁ、あそこは何かの通り道になってたみたいやな」

と父が言い、母もそれに頷いていた。

それを聞いて私は、やはりあれは夢ではなかったのだと確信した。

私の母方の曾祖父は、地元でも有名な霊感の持ち主だったらしい。
近所に住む少し上の世代の方に、よくその話を聞いたことを覚えている。

そして、家族の中で、母と私がその血を強く継いでいるらしい。

昔から母はよく何かを連れて帰って来そうになるのを、私が気付いて父が対処していた。

あの夜のことも、翌朝になって私が母に話しているのを聞いていた父が、すぐに盛り塩して、ありとあらゆる方法で私と母を護ろうとしてくれたらしい。

盛り塩
mage photo

あの夜、もし母が腕を振り回していなかったら、もし翌日になっても父が対処してくれなかったら…
もしかしたら、私は毎晩あの身が竦むような気配を感じ、庭で飼っていた犬もどこかに連れていかれたのかもしれない。

そう思うと、背すじに嫌な汗が伝う気がした。

コメント

タイトルとURLをコピーしました