【怖い話】人間が一番怖いと思う実話|長編「人形の家」埼玉県の恐怖体験談

投稿者:しまうたむら さん(40代/女性/自営業/山梨県在住)
体験場所:埼玉県S市

私は大学までは東京で生まれ育ちましたが、現在は地方に住んでいます。
そのため、時折懐かしく思っては、東京の実家や学校の周りをGooglemapのストリートビューで見てみることがあります。

いつの間にか、中高時代に寄り道していたドーナツチェーンが不動産屋さんになっていたり、大学時代の思い出のカフェが変わらぬままあったり、寂しいやら驚くやらです。

そんなことをしていると、あのカフェでよく一緒にお茶をした友人は元気かしらと、授業を抜け出しては熱中していた他愛ない茶飲み話を思い出していたのですが、そのうちの一つ、あのゾッとする話の記憶まで甦ってきてしまったのです。

それはゾッとすると言うには大げさかもしれない、それこそ他愛なく、長く忘れていた話なのですが…身近な友人が体験したことであり、悲劇が起きるような大きな落ちがあるわけでもないのが却って怖いと感じた話でした。

友人のA子は埼玉県の出身です。

大学までは、バス、JR、私鉄と乗り換えて、更に大学行きのバスに乗車するという交通機関フルコースでの二時間通学でした。

忙しい学科であっただけに「下宿はしないの?」と聞かれることも多かったようですが、一人娘だったこともあり、遅い時間に帰宅することになっても実家住まいを続けていたようでした。

A子の実家の最寄り駅は、埼玉県中心部にある新幹線も停まる大きな駅とはいえ、そこから実家までは路線バスで30分かかる田園地帯。

「帰る頃には真っ暗で、ぼんやり灯った街灯が却ってホラーな雰囲気なのよ」
と、彼女は冗談のように笑ってネタにしていました。

そんな自虐的地元トークの延長で、A子がこんな話を始めたのです。

A子の家の近くには小規模ながらニュータウン的な区画があり、おそらくは高度経済成長期くらいに出来たのだろうけど、もはや営業しているとは思えないような薄暗いマーケットなどがあって、少し怖いのだそう。

ニュータウン
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そのニュータウン区画を通ると、バス停から自宅のある旧来の住宅地までの近道になるので、ちょくちょく利用していたものの、似た家ばかりが並ぶ為、そこはまるで迷路のようで、夕方の帰り道では、よく区画内で道を間違えては思わぬところに出てしまうこともあったそうです。

そして、道を間違えては度々前を通り掛かるのが、無数の人形がぶら下がった家だそうです。

人形がぶら下がった家
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窓、ベランダ、軒下にはもちろん、庭木や、使われず錆だらけになった物干し竿や門柱にも、紐で括られた人形が無数にぶら下がっていると言うのです。

怖いのでまじまじとは見ないものの、人形の種類は様々で、日本人形やドレスを着た西洋人形、ぬいぐるみ、プラスチックの動物の人形などが目に付くそうです。

A子がその家に気付いた中学生の頃から、少しずつ人形が増えているそうで、

「先日迷い込んだ時は、ポストの上に真新しい人形が増えていてギョッとしたわ」

と彼女は肩をすくめてみせました。

その後も、たまにA子はその家の変化や様子を私に報告してきては、お互い何となくゾッとするものを感じながら、まるでそれが厄払いになるかのように、わざとらしく怖がってみては笑いあったりといったことを繰り返していました。

そんなある日。
しばらく大学を休んだA子が、久しぶりに顔を見せた日のことです。

私は具合でも悪かったのかと思ってA子に様子を尋ねました。

彼女は具合が悪いわけではないと答えながらも元気のない様子。

授業を終えると、何となくいつものカフェへ二人とも足が向き、いつも通り向かい合って座りました。

ちょっと神妙な彼女の表情に、何か話したいことがあるのかなと待ってると、A子から顔を寄せるように手招きされ、私がテーブルに近づくと、小声で怯えながら次のような話をはじめました。

一週間ほど前、休講で早く帰宅できたその日のことです。

A子はいつも通り大学から二時間かけて、自宅近くのバス停で降りました。

いつもは暗く街灯がホラーな景色なのですが、その日はまだ明るく、のどかな郊外の風景そのもので、A子は何の気なしにニュータウン区画を通ってみようと足を向けたそうです。

機嫌良く歩いていた彼女は、気付くと例の人形の家の前に出ていました。

しかし、太陽の下で見る人形たちは、それは多少気味が悪いものの、いつもほど怖くもなく、むしろ却って好奇心をそそられて、A子はついついじっと見つめてしまったのです。

さらにあろう事か、その家の二階を窺うようにまじまじと目を向けたり、散歩のふりをしてその家のあるブロックをぐるっと回ってみたりしたそうです。

人形の家もたぶん周囲の家と同じ時期に建てられたのであろうこと、白い壁に赤い屋根、よく見るとベランダの手すりは曲線のお洒落なデザインで、庭の植栽も凝っていたことが窺えて、(なかなか乙女チックな家だったんだなぁ)と感じたそうです。

そんな一般的な住宅としての一面も、人形がぶら下がる頃にはむしろ不気味さを強調する一助となっていたわけですが。

そんな風に人形の家の周りを窺うようにうろうろしていると、突然現われた男にいきなり腕を鷲掴みにされたのです。

腕を鷲掴み
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昼間のニュータウンはほぼ無人。
通りに人は皆無ですし、どの家も人が住んでいるとは思えない場所です。
人形の家も同じように空き家だろうとA子は油断しきっていたのです。

固まって声が出ないA子に、腕を掴んだ男は口をぱくぱくして何か訴えています。

「ごめんなさい、ごめんなさい…」
とA子は小声で繰り返しながら、腕を放してもらおうと後ずさります。

(男が刃物を持っていたらどうしよう・・・)
と、腕を掴んでいる男の反対の手を見ると、青いドレスを着た紫色の髪の人形が握られていました。

青いドレスの紫色の髪の人形
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(あの家に新しく人形を飾るところだったんだ…)
そう気付いたA子は気が動転して、その瞬間「あ!」と一言だけやや大きめの声が出たんです。

その声に驚いた男の手がゆるんだ隙に、A子は男の手を振りほどいて走って逃げ出しました。

男はあっさり手を離し追ってくる気配もなかったそうですが、彼女は一度も振り返らずバス停のあるバイパスまで一気に走ったそうです。

逃げている間中もずっと、男が握っていた、青いドレスを着た紫色の髪の人形のことが頭から離れず、今、ここで私に話していても、その気味の悪い人形の姿ばかり考えてしまうのだということでした。

男の顔はほとんど覚えておらず、年齢はさして若くないようだという点以外は何も記憶に残っていないとのことでした。

あまりに疲れてしまって家族にも言えず、警察に言うことでもないかと考え、この話は今初めて話したと言っていました。

話し終わった後、ため息をついたA子は再びその時の恐怖を思い出したのか、目には薄っすらと涙を浮かべていましたが、それは話して安心したからだとA子は言い、その後はいつも通りの彼女に戻っていました。

けれどそれ以降、人形の家のことはもちろん、ニュータウンのことすらもA子は二度と話さなくなりましたし、何となくですが、人形が出てくる映画や美術展を避けているようでもありました。

やがて私たちは大学を卒業し、私は生まれ育った東京から移住して就職、A子は就職後、海外へ移住しました。

現在はA子の実家周辺もすっかり開発が進み、あのニュータウン区画はどうなったのか…

私は最初にお話しした通り、時折Googlemapのストリートビューで思い出の街がどうなったのかを見ることがあるのです。

長く忘れていた人形の家の話を思い出した私は、思い切ってその家の現在をGooglemapで調べてみることにしました。

グーグルマップで検索
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人形の家の具体的なアドレスはわかりませんが、A子はそこを近道として使っていたわけですから、A子の使っていたバス停とA子の実家住所の間にある、整備された古めの区画を航空写真で探してみます。

A子が言ってたように、昔は畑や田圃があったんだろうなと思われるA子の実家の地域を見ると、現在は大きな郊外型ショッピングモールと、バイパスから伸びた新しい道が通り、道路沿いにはレストランやカフェとおぼしきカラフルな屋根が並んでいます。
その近くにはいかにもファミリー層が好みそうな、公園を敷地内に備えたおしゃれな大型マンションも確認できます。

そして、そこからちょっと離れた場所に、ここかなと思われる碁盤の目のような区画はありました。

おそらくニュータウンと呼ばれていたその区画の半分は、既に更地のようでした。

ところがです。
更地と更地に挟まれて、一軒の赤い屋根が見えます。
古びてはいますが、はっきりと赤い屋根です。

拡大するとベランダではないかと予想される白っぽいものがぼやけて見えます。
何か蔦のようなものが絡まったそれがぼやけて見えるのです。

ストリートビューに切り替えてそこを確認すると、私はゾッとしました。

カフェでA子が初めて人形の家の話をした時と同じ、髪の毛が逆立つようなゾクゾクする感覚に襲われ、思わず「ひっ」と声が出ました。

そこは人形の家でした。

A子から聞いた通り人形がびっしりと吊るされ、異様な雰囲気を漂わせた家。

あれからも人形は増えたのでしょうか、庭木と庭木を繋いだ紐にも万国旗のように人形が吊るされています。

そして、私が息も出来ない程に胸がドクンと脈打ったのは、ストリートビューの中に、青いドレスを着た紫色の人形の姿を見つけた瞬間でした。

日に焼けた青いドレスはボロボロで、紫色の髪は色褪せてはいましたが、あの日A子から聞いたままの人形です。

門柱の中央にくくりつけた角材があり、なぜかその人形だけがそこにぐるぐるに縛り付けられ、一際目立っていました。

縛り付けられた人形
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何か呪術的な意味があるようにも見え、私は息を飲みこんだまま、暫し呆然とその異様な光景を眺めていました。

このことは、A子には話していません。

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