【怖い話|実話】短編「拭く女」心霊怪談(沖縄県)

沖縄県:拭く女
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投稿者:まい さん(40代/女性/専業主婦)
体験場所:沖縄県那覇市の某スナック

これは私が中学生の頃に通っていた塾の先生が、授業の空き時間に私たち生徒に聞かせてくれた話です。

10年近く前、先生には沖縄県の那覇市によく通っていたスナックがあったそうです。

誰か店の女性といい関係だったというわけではなく、釣り好きであることと巨人ファンであるということでマスターと意気投合し、それから通うようになったのだそうです。

だいたい週2回ほど、先生はそのスナックに飲みに通っていたそうなのですが、行く度にほぼ毎回、閉店まで店に残っていたそうです。

飲み過ぎてしまうこともしばしばで、大概の場合は閉店後にマスターがタクシーや代行を呼んでくれるのですが、ごく稀にマスターが忙しくて余裕のない時には、先生を店に寝かせたまま帰宅することもあったそうです。

先生は鍵の場所や戸締りの仕方など、店に関する大体のことは教えてもらっていたので、酔って眠ってしまった時も、目が覚めたら自分で店の戸締りをして帰ることもできたそうです。

ですが、一旦眠り込んでしまうと中々起きない質だった先生は、結局朝まで眠り込んでしまうのが常だったとのことで、ひどい時なんかは翌日のお昼を過ぎてから、開店準備のために出勤してきたマスターや店の女の子に起こされることもあったそうです。

【怖い話|実話】短編「拭く女」心霊怪談(沖縄県)-画像01
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そんなある日のこと。

その日は雨で客足が少なく、閉店前の2時間ほどはお客さんが先生だけだったそうです。

客もいないため暇を持て余したマスターが先生の相手に専念したためか、その夜の会話は大いに盛り上がり、先生は久しぶりに飲み過ぎてしまったそうです。

そのまま閉店時間を迎えると、マスターは一通りの閉店作業を済ませ「明日は朝から外せない用事があってね」と告げたまま、先生をボックス席に眠らせさっさと帰ってしまったそうです。

マスターが帰った後も、楽しいお酒のおかげと日頃の疲れもあって、慣れ親しんだ店内で先生は一人ぐっすり眠っていました。

どれくらい時間が経ったのか…

少し向こうの方から『キュッ、キュッ』と、布巾でテーブルを拭くような音が聞こえ先生は目が覚めました。

目を開けると、真っ暗な店内の中、ボックス席の仕切りの向こう側で、カウンターテーブルを拭いている女の子の後ろ姿が見えたそうです。

小柄でおかっぱ頭の女性だということは分かるのですが、先生の寝ていたボックス席に対し彼女は背を向けているため、顔が全く見えないままでした。
眠気と酔いの影響もあったのか、先生はその女の子の姿に何となく違和感を感じたと言います。

しかし、店の女の子のことは全員把握していた先生には、小柄でおかっぱ頭の女の子にも心当たりがありました。

「ごめん、ジュンちゃん。また寝ちゃって。今なん…」

と、時間を聞こうと口を開きかけた時、先生はその違和感の正体に気付いて声が出なくなったそうです。

(辺りは真っ暗なのに…なぜ…彼女の姿だけがはっきり見えるんだ…?)

そのことに気付いた先生は、急に寒気を感じ、息を殺してその女性を見つめました。

そこで分かったそうなのです。

真っ暗な店内で、ぼんやりと、その女性自体が発光していることに。

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(え?何で光ってるの!?ジュンちゃんじゃない!誰だ!?)

確かにジュンちゃんは小柄だけれど、それはあくまで成人女性にしては小柄だということ。
それなのに今カウンターにいる女性はまるで少女のように華奢で、それによく見ると、やけに古ぼけたぼろぼろの服を着ていて、更にその姿は薄っすらと光っています。
当前ジュンちゃんは発光しません。

(うわぁ…誰だよこの子…)

暗闇のなか目が覚めたら、知らない女性が発光しながらテーブルを拭いている。
全く訳の分からない状況に先生の頭は一気に混乱しました。

そんな先生に気付いているのかいないのか、相変わらず女性は背中を向けたまま『キューッ、キューッ』とカウンターテーブルを拭き続けています。

とりあえず先生は女性に気付かれないように息を潜め、そのままふと、その女性の手元に目を向けたのですが・・・

何かおかしいんです。

女性は布巾か何かでテーブルを拭いているのだろうと思っていたのですが、違ったんです。

布巾なんか持っていなかったんです。

女性は自分の両手の指をきっちり揃え、ただそれに力を込めて、カウンターテーブルの上を滑らせているだけなんです。

『キューッ、キューッ』って。

その指はとても汚れていたそうです。

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抜けきっていない酒のせいもあってか、その記憶を最後に先生は意識を失いまいました。

次に目を覚ました時には、お昼を過ぎて出勤してきたマスターに起こされていたそうです。

あの体験は何だったのか、後になって冷静に考えてみると、自分も飲み過ぎていたし、もしかしたら夢だったのかもしれないと先生は考えたそうです。
それにマスターに不快な思いをさせるのも躊躇われ、そのことはマスターには話さないでいたそうです。

それからも先生は相変わらずそのスナックに通い続けたそうなのですが、どんなに飲んでしこたま酔った日でも、あの夜以来、絶対に店に泊まることはなくなったそうです。

それから2年ほど経った頃。
世の中の不景気の煽りもあってか、泣く泣くマスターはそのスナックを閉める事を決めたそうです。

建物も完全に取り壊し、更地にすることになったそうなのですが、実際に工事が始まると、途端に工事を止めなければならなくなったそうです。

建物の下から、幾つかの人骨が出てきたためでした。

いずれも沖縄戦での戦死者の遺骨と見られ、事件性はなかったそうですが…

「あの子も、その中にいたんじゃないかな…」

と呟いて、先生は話を締め括ると、すぐに次の授業の準備に取り掛かりました。

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