【怖い話|実話】短編「回転球体」心霊怪談(広島県)

【怖い話|実話】短編「回転球体」心霊怪談(広島県)
投稿者:まなまな さん(30代/女性/会社員)
体験場所:広島市内の実家

あれは私が中学3年生だった時の体験です。
10年以上経った今でも当時の記憶はハッキリと覚えており、また、絶対にあれが夢だったとは思えないのです。

当時、私は『金縛り』に悩まされていました。
寝静まった深夜、フッと目が覚めると、体のどの部分も動かせないのです。
ただ視線だけ自由が利くのですが、あちこち見回してもしょうがないので、結局そのまま寝てしまうということが毎晩のように続いていたのです。

もともと霊感と呼ばれるようなものが全くない私にとって、金縛りとは幽霊などとは全く関係のないもので、身体の問題によって発生する現象だと思っていました。
ですが、初めて金縛りに遭った夜、次の日学校で友人に相談をすると、「金縛りは幽霊の仕業だよ」と、当然のように言われ、私はとても動揺してしまったのです。

友人からそんな風に言われ、金縛りも毎晩のように起こり続けているし、そのうち少し怖くなってきて、自分でもインターネットで『金縛り 理由』とよく調べるようになっていました。

すると金縛りの原因に関して、幽霊の仕業とする怖い内容の記事も沢山あったのですが、そんな中で私は1つの記事を見つけたのです。

「金縛りは、身体のストレスにより起こるもの。体は眠っている状態で脳だけ起きた状態のことをいう」

どこかのお医者様の回答として書かれた記事のようでしたが、私はそれを見てホッとしたのです。
高校受験を控えていた当時、受験への不安や勉強の疲れなど、自分が思う以上にストレスが溜まっていて、それによって金縛りが起きているのだと確信することが出来たのですから。
今考えると、怖いことが苦手だった私は、幽霊の仕業などとは信じたくなかったのかもしれません。

それからも金縛りは頻発していましたが、原因はストレスによるものと分かっていたので、私は特に気にすることもなくなりました。

ただ、その日の金縛りはいつもと違ったんです。

目が覚めたとたん何かがいつもと違うんです。
体が動かないことに変わりはなく、最初はその違和感が何なのか分からなかったのですが、しばらくしてその違いに気が付きました。

視線が動かせないんです。

それまでは体は動かなくても視線は自由に動かせましたでした。
ですが、その日は視線も部屋の角に固定されたまま、そこから逸らすことが出来ないのです。

きっと、そこに何かがいる…

そんなことを思ってしまった私は、直ぐに目を閉じようとしましたが、目を閉じることも出来ません。
何だかこのままではマズいと思い、どうにしかして体を動かそうと、あちこち力をいれてみるのですが、どの部位もピクリとも動きません。

とにかくどうにかしなくてはと、力任せに抗っている時でした。
私はもう一つ、あることに気が付いたのです。
目にばかり気を取られ、しばらくその感覚に気付くことが出来なかったのだと思います。

足の間に、何かがいるんです。

私の両足の間、左右のふくらはぎとふくらはぎの間、そこに何かが挟まっている感覚に気が付いたのです。

それまで目にばかり回していた意識を両足に集中してみると、左右のふくらはぎの間には、何か丸いものが3つあるのが分かります。球体のようなもの。それを私の足で挟んでいるような状態です。

しかも、その3つの球体は、ゆっくりと回っていました。
丸い物体が3つ、私のふくらはぎに当たっては離れる感覚。

それが何なのか確信した時、私は心から恐怖を覚えました。

回りながら順番に足に当たる3つの球体。

目、鼻、耳・・・・

私の足の間で回っているもの、それは間違いなく人の頭だと確信しました。

それがゆっくりと回りながら、目、鼻、耳、と順番に私のふくらはぎにこすり付けていくのです。

そのまま私は眠ってしまったのか気絶したのか覚えていません。
気が付いたら朝になっていました。

目覚めた瞬間、直ぐに私は布団をめくり上げました。
そこに人の頭はありませんでした。

ただ、足にはその感覚がしっかりと残っていました。

これが私に起きた不思議な体験です。
その日を境に、金縛りもピタッと治まり、その後は何も起こることはありませんでした。

当時は誰かに話すのが怖くて、この体験については自分の中だけに留めておりましたが、大学生になった私は、飲み会の席でふとこの体験談を話しました。

すると友人達は『千と千尋の神隠し』で湯婆婆の部屋に登場する、頭3つのキャラクターではないかと言って笑っていました。
「オイッオイッ」と言いながら、千尋の周りを囲っていたキャラクター。
それを思い起こして私も思わず笑ってしまいました。

現在は30歳になった私ですが、今は特に不思議な体験もせずに平凡な日常を過ごしています。
あの体験も笑い話にできるくらい、今では一つの「ネタ」になる記憶だと思っています。

ただ、あの時の足に残った感覚は、10年以上経った今でも覚えています。
やっぱりあれが夢ではないことは確かなのです。

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