【怖い話|実話】短編「冷蔵庫の音」心霊怪談(沖縄県)

沖縄県:冷蔵庫の音
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投稿者:まい さん(40代/女性/専業主婦)
体験場所:沖縄県那覇市の実家

最初に言っておきますが、私には霊感がありません。

怖い話は好きですが、霊的な体験をしたことは皆無ですし、学生時代には何度も友人と心霊スポットに行きましたが、何かが見えたことなど一切ありませんでした。

これは、そんな私が2年前に体験したことなんです。

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私は関西在住なのですが、第一子が妊娠9ヶ月になる頃、里帰り出産のために沖縄の実家に帰ることにしたのです。

私の実家は、祖父母が1階、両親が2階に住む2世帯住宅でしたが、4年前に祖父母が両方とも亡くなってからは1階は空き家状態になっていました。

ですが、誰も住んでいないとはいえ1階には仏壇があり、母が時々掃除もしており、法事の時などもそちらを利用していたので、荒れた感じなどは全くありませんでした。

その実家へ大きくなったお腹を抱えて帰ると、母から早々にこう言われたのです。

「赤ちゃんが生まれるまでは2階で私たちと生活して、生まれた後は赤ちゃんとあなたの2人で1階で生活して欲しいの」

母がどういう意図でそう言ったのかは分かりませんが、父はまだ現役で働いており、赤ちゃんの夜泣きで迷惑をかけるのは申し訳ないと思っていた私にとっても、それはとても有り難い提案でした。

「ある程度のものは揃えておいたから。」

母にそう言われ、1階の様子を案内してもらっている時でした。

母の用意の良さに感心していると、突然、

『ガコッ』

という大きな音がして、私は驚いて直ぐに音がした方を振り返ったんです。

そこには、祖父母が使っていた大きな冷蔵庫がありました。

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来客が多かった祖父母は、2人暮らしには不釣り合いなぐらい大きなファミリー向けの冷蔵庫を使っていました。

「驚いたでしょ?時々、2階に置き切れない食材をこっちの冷蔵庫に入れるんだけど、製氷機の音が大きすぎて、分かっていてもビックリすることがあるのよね」

と母は言っていましたが、私は製氷機の氷が落ちる音にしては随分大きな音だなと違和感を覚えたんです。

それから1ヶ月ほど、私は両親と2階で生活しました。

そして、ほぼ予定日通り赤ちゃんを無事出産すると、私は赤ちゃんと2人、1階で暮らし始めたんです。

少なくとも生後1ヶ月検診までは沖縄で受けていく予定だったので、それまでは1階での生活が続きます。

気合いを入れて臨んだ初めての子育て生活でしたが、果たして新生児の夜泣きは大変なものでした。

睡眠のリズムが出来ていないので、朝昼晩と時間に関係なく寝たり起きたり泣いたりと、私にとっては寝る間もない生活です。

それでも昼間は母が手伝いに来てくれたので、その2時間ほどは気絶するように眠ることができました。

ですがその度に製氷機の『ガゴッ』という音に起こされることがとても不満でした。

1時間に1回くらいの間隔で鳴るその音に、私も子供も起こされてしまい本当に迷惑していたのです。

そんな不規則な生活をしばらく続けた頃、私はあることに気が付きました。

いつも深夜の1時から3時頃になると、決まって子供がひどく泣き喚くんです。

それは普段の泣き声とは明らかに違う凄まじさで、しかもそんな時はいつも必ず、天井のある決まった一点を見つめながら怯えるように泣き喚いているのです。

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私も子供をあやしながら、毎回ドキドキしてその方向を見るのですが、私には天井以外に何も見えません。

(もしかして、この子にだけ何かが見えているのかしら…?もしかして…おじいちゃんとおばあちゃん…?)

そんなことを毎晩考えながら、ろくに眠れない日々がしばらく続くと、心はささくれ立ちイライラばかりが募ってきます。

子供のことは勿論可愛いのですが、眠れないことに対するストレスは増すばかりでした。

そんな調子で2週間ほがどが経過した真夜中のことでした。

やっぱりその夜も天井を見つめ泣き喚く子供をあやしつけている時、私はとうとうキレてしまったんです。

夜中に子供を怖がらせる天井の何か、そんなのが本当にそこにいるんだと、その時は本気で思ったのです。

(それは私を可愛がってくれた祖父母とは絶対に違う!)

そう直感的に思い、それ以外の何かを威嚇するように私は天井に向かって怒鳴りました。

「いい加減にしろ!赤ん坊相手にしょうもないことしてんじゃねえ!!出てこいや!!」

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何もない天井に向かってそう怒鳴り散らす私は、完全に追い詰められていたのだと思います。

勿論何も見えていませんし、出てくることもありません。

ですがその直後、

『ガコッ!!』

冷蔵庫がいつもより更に大きな音を立てて鳴ったんです。

まるでこちらの怒りに対して何か抗議するかのように…

子供は私の剣幕に驚いたのか、いつの間にか泣き止んでいました。

それから30分後、私たちはゆっくりと眠ることが出来ました。

不思議とその日から、子供は夜泣きこそするものの、真夜中に特にひどくなるようなことはなくなりました。

怯えるように泣き喚く我が子を見ないで済むようになると、私も安心したのか、その日からイライラはゆっくりと解消されていったように感じます。

それから3日ほどが経った頃でした。
私はあることに気が付いたのです。

冷蔵庫から聞こえる『ガコッ』という音の頻度が明らかに減っているんです。

それまで1時間に1回くらいの間隔で『ガコッ』と鳴っていた製氷機の音が、気付いた時には1日に2回くらいしか鳴らなくなっていたのです。

ですが、そのことは余り深く考えないようにして、私はただ残りの日数をそこで穏やかに生活することだけを心掛けました。

そして1階での生活がひと月を過ぎる頃には、私は子供と無事に関西に戻ることが出来ました。

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今考えても、あの時私が怒鳴ったのは軽いノイローゼだったのだと思います。

ですが、実際にあれを境に『ガゴッ』という音の頻度は明らかに減り、私たちが穏やかに過ごせるようになったのも事実です。

あの音が怪異と呼べるものかは分かりません。

でももし、そもそもあの音が製氷機の音ではないのだとしたら…

そう考えると、やっぱり私の怒声があそこに住み着く何かを追い払ったようにも思えるのです。

けど、もしそうなのだとしたら、あの時私が直感で感じた「優しい祖父母では絶対に無い」という勘が、当たっていることを願うのみです。

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