
体験場所:山口県I市
私は高校1年生の時から地元の山口県I市で新聞配達のアルバイトに従事しており、朝4時から5時30分頃まで、週5日で働いていました。
アルバイトを始めた当初から割り当てられたエリアは変わることなく、アルバイトを辞める高校卒業前までの約3年間、ずっと同じエリアを担当していました。
ある日の配達でのことです(記憶では高2の冬頃)。
いつもの通い慣れた道をカブを走らせ担当エリアに向かう途中、小学校の横に併設された公園があるのですが、その前を通り過ぎようとした時、公園の中から何か言葉では言い表せない不気味な気配を感じました。

私は小さい頃から人より霊感が強く、同じく霊感が強い母と二人、他の家族には感じられない気配を同時に感じたり、家の中で知らない人影を見たりすることが度々ありました。
なので、新聞配達を長年していると、まだ夜が明け切る前の暗闇の中に、嫌な気配を感じることが時々あり、そんな時は意識的に気配のある方を見ないようにしていました。
なのでその時も、いつものように気配のする公園の方は見ないように通り過ぎました。
公園を通り過ぎて少し行くと、今度は大きな病院が出てくるのですが、その辺りからが私が担当する配達エリアとなります。
病院周辺にも配達先の家が数軒あり、病院の横の小道を抜けてその辺りの住宅へ向かいます。
小道に入る手前のところで、5階建ての病院の側面全体が見えるのですが、そこは廊下の突き当り部分で、一面ガラス張りになっています。

全ての階のガラスの内側は、非常階段を示す緑のライトで照らされいて、その灯りが病院特有の不気味な雰囲気を醸し出しているように感じます。普段ならそれを横目に「気味が悪いなぁ」と思うだけなのですが、その日は明らかにいつもと違いました。
先ほど公園で感じたのと同じ気配を、その病院からも感じたのです。
やっぱりその時も公園の時と同様に、私は病院の方を見ないよう注意して小道へと入って行きました。
とはいえ大きな病院なので、小道を走りながらもチラチラとその姿が横目に入ってしまいます。公園から続く妙な胸騒ぎもあったので、絶対に病院を見ないように神経を使いながらカブを走らせました。
何とかその日の配達も無事に終え、営業所に戻る途中でした。
あの公園の前に数台のパトカーが停まっていたんです。
通り際、チラッと公園内を覗くと、そこには数人の警察官の姿と、ブルーシートで覆われた藤棚が見えました。
近所の野次馬も何人か様子を見に来ており、ただ事ではないことは分かりましたが、私はカブを停めることなく公園を通り過ぎました。
営業所に戻ると、世間話程度に公園で感じた気配のこと、それと帰りの公園にパトカーが止まっていたことを営業所長に話すと、私は学校に行く準備があるので足早に帰宅したんです。
翌日、いつも通り出勤すると、営業所長が私の方に近寄ってきて、
「知らん方がいいよなぁ~」
そう呟いて、また向こうへ行ってしまいました。
特にそれ以上こちらから聞くこともなく、その日もいつも通り配達に向かいました。
すっかり昨日の出来事を忘れていた私は、公園の前を普通に通り過ぎ、病院横の小道に入ろうとした時、無意識に病院に目を向けてしまいました。
すると3階のガラス窓の内側に、パジャマ姿の男の子が立っていて、なぜかこちらを見下ろしています。

こんな時間に、非常階段の緑の光に照らされた男の子の姿はどこか違和感があり、しかもどういう訳か不自然なほど脇を広げていています。その光景は、冷静になればなるほど全てが異常に思えたんです。
その途端、昨日感じた気味の悪い気配を思い出してゾクリとし、私はすぐに男の子から目を逸らして慌ててカブを走らせました。
妙な寒気にまとわり付かれながらも、何とかその日も安全運転で配達を終わらせて、営業所に戻りました。
すると、営業所長がまた近寄ってきて、今度は何やら言い辛そうに話し始めました。
「昨日、君が気持ち悪い感じがしたっていう公園があるじゃない?そこの藤棚で、昨日の朝、中学生の男の子が首を吊って自殺してたらしいんだ。」
「えっ…」

驚いて言葉が出せずにいると、営業所長が続けて言うには…
私が配達前に公園を通り過ぎた時には、既に男の子は首を吊った後だったということ。
そして第一発見者は、早朝の出勤中だった隣の小学校の教頭先生らしく、時間は朝5時頃とのことでした。
ということは、私が公園から嫌な気配を感じたあの時、公園の藤棚には、まだ男の子がぶら下がったまま・・・背筋がゾクリとしました。
それとは別に後で聞いた話なのですが、あの病院の3階は、重病患者が入院するフロアなのだそう。
公園と病院から感じたあの気味の悪い気配、そこに何か因果関係があるかは分かりません。
ただ、公園で首を吊った男の子と、私が病院で見た不気味な男の子、そのタイミングがあまりにもリンクしているように感じて、正直、無関係とは思えないのですが…まぁ敢えて知りたいとも思いませんが。
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