体験場所：岡山県Ｔ市 某中学校の体育館
それは、筆者が中学生の時の話だ。
うちの中学が建っていた土地は、もともと墓場だったとの話で、多くの怪談話があった。
私は、怖がりで想像力豊かな子供だったので、それらをなるべく聞かないようにしていた。
友人たちは、コックリさんやトイレの花子さんなど多くの怪談話で盛り上がっていた。
中には霊感が強いという子がいて、いつも自分の体験や、何を見たとか、どういう霊にあったとか色々な話をしては他の友人たちを怖がらせいた。私は、その類の話もずっと避けていた。
そんなある冬の日、体育の授業での話だ。
とても不思議な体験をした。
今思えば不思議で奇妙な体験であった。
うちの学校の体育館は、校舎の奥まったかなり湿っぽい場所にあり、昼間でもひんやりと冷たい空気が流れていて、そばには生い茂った竹林があった。
私は友人と二人で次の体育の授業を受けるため、その体育館へと向かっていた。
先に向かった体育係の子が、既に体育館の裏扉の鍵も開けているはずと思い、私と友人はそっちへ向かった。
体育館の裏に着いて、扉のノブを捻ると、鍵はかかったままだった。
体育当番がまだ裏扉を開けていなかったのだ。
仕方なく友人と二人で扉の前で待つことにした。
しばらく待ってもなかなか体育係がやってこない。
友人と二人で不思議に思いながら、もう一度ドアノブを捻ってみることにした。
すると、扉の擦りガラス越しに、中から私たちと同じ体操着を着た子の手が見えた。小豆色の、学校指定の女子体操着。ガチャっと鍵が開く音がした。
友人と共に「ありがとー！」と言いながら、もう一度ドアノブを捻って中に入った。
中は真っ暗だった。
シンっと静まり返った体育館、どこにも誰の姿も見当たらない。
友人と二人で顔を見合わせ「？？？」、思わず息を呑んだ。
その数秒後に正面の門が外から開けられ、賑やかな声と一緒にクラスメートたちがドッと入ってきた。
その中の体育係が私たちを見るなり「え？どっから入ったのー？裏口の扉？鍵がかかって無かったの？」と声をかけてきた。
私と友人は、最初に来たとき裏の扉には鍵がかかっていたこと、しばらくして中から鍵を開ける音がして、同じ体育着を着た子の手が見えたことを話した。
クラスメートも全員、思わず息を呑んだ。
その中の一人が「何を見たの？女の子だった？」と聞いた。
女子の体操着を着ていた。ということしか分からなかった私たちは、「だったと思う」と曖昧な返事をした。
その後、クラスはその話でもちきりになり、また不思議な怪談話が生まれてしまった。
怪談話が苦手な私はというと。。。扉を開けてくれたのだから、きっといい子に違いないという独自の持論に辿り着き、そっと心にしまうことにした。
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