【怖い話|実話】短編「夕焼け小焼け」心霊怪談(千葉県)

【怖い話|実話】短編「夕焼け小焼け」心霊怪談(千葉県)
投稿者:まりー さん(女性/27歳/理学療法士)
体験場所:千葉県K市

私は千葉県のK市で夫と2人暮らしをしています。
休日は旦那さんと散歩をするのが最近の日課です。
特に川辺を歩くのがお気に入りでした。

その日も、いつものように旦那さんと川辺を歩いていました。

「今日もいい天気だねー♪」

なんて、何でもない会話をしながら穏やかな川の流れを見て、のんびりと散歩していたんです。

ふと川岸に視線を移した時、ある物に目が留まりました。

それは川岸に張られたフェンスの前、そこに沢山の花束や折り鶴が手向けてあったんです。

(あぁ、ここで誰か亡くなったんだろうな…かわいそうに)

私は即座にそう思いました。
でも、あまりずーっと見ていたり、憐れんでいると、憑いて来てしまうと聞いたことがあったので、私はスッと視線を移し、そのまま前を素通りしました。

何事もなかったように会話を続けようとしたのですが、ふと隣を見ると旦那さんがいません。
直ぐに後ろを振り返って私は驚きました。

旦那さんは、先程の沢山の花束の前で手を合わせ、頭を垂れて拝んでいたんです。

その姿を見た時、なぜか分かりませんが、背筋が一瞬ゾクっとしました。

「そういう事すると、ついてきちゃうよ!」

と、私は旦那さんの腕を引っ張って、逃げるようにそこを後にし、足早に家に帰りました。

その日は一日、何となく気味の悪い心持ちで過ごました。
その夜のことです。

「あはは、面白いねー。」

なんて、すっかり昼間のことも忘れ、バラエティ番組を旦那さんと一緒に見ながら過ごしていた時です。

不意に『バチッ』と照明の電気だけが消えたんです。

「ぎゃー!!」

突然の暗闇に思わず叫んでしまったのですが、テレビだけは変わらずピカピカと光っているのが妙に不気味に見えました。

「え?停電?」
「でも、テレビついてるよ?」

我が家の照明は壁にあるスイッチでしか消すことが出来ないですし、当然、私も旦那さんも座ってテレビを見ていたので、スイッチには触れていません。

それなのに、勝手に照明だけが突然消えたのです。
今の家に住み始めてから初めての事でした。

旦那さんが恐る恐るスイッチを見にいくと、

「あっ・・・」

やっぱりスイッチは『OFF』の方に倒れていました。
誰かが押したことになります。

「もう・・・寝よう・・・」

私も旦那さんも怖くなって、直ぐに寝る準備をして、そのまま布団に入り込みました。

それから数分が経った頃でした。

「ブゥー…ブツッ…ブツッ…ブツッ…」

不意に窓の外から無線が途切れるような音が何回か聞こえた後、

「ブツッ・・・タンタンタンタン♪タンタンララ~♪」

そのまま防災行政無線の『夕焼け小焼け』が流れ始めたんです。

時刻を見ると夜中の23時。
夕刻に外で遊んでいる子供たちの家路を促す『夕焼け小焼け』が、こんな時間に流れるはずがありません。

「え?え?!何?なになに!!怖い怖い!」

と、あからさまに取り乱す私を他所に、必死に冷静さを保とうとしている旦那さんが、

「も、もしかしたら、何かの手違いかもしれないよ。つ、Twitter見たら、ほ、他に聞いてる人も、い、いるかもしれないよ…」

と、震える声で言いました。

直ぐに2人して血眼になってTwitterで検索しましたが、そんな呟きはただの一件もヒットしません。

つまり、恐らく私たち2人しか聞いていないのかもしれない…

そんな私たちの不安を煽りながら、外から聞こえる『夕焼け小焼け』は徐々にフェードアウトするように小さくなり、やがて聞こえなくなりました。

その日は怖くて眠ることが出来ず、よく分かりませんがとりあえずお互い塩を掛け合い、玄関に盛り塩もして、二人して震えながら夜を明かしました。

次の日、ご近所さんに昨晩の出来事を話してみると、

「え?夜中?防災行政無線?!鳴るわけないじゃない!夜中は市役所に人もいないだろうしね~」

そう言って笑われてしまいました。

(やっぱり、私達しか聞いてない…)

そう思って動揺していると、ご近所さんは続けて「そうそう、それと知ってる?」と言って、ある話をしてくれたのですが、それは正に昨日、川岸のフェンスに手向けられていた花束の由縁についてのことでした。

それは最近、近所の小学校が終わった放課後のことだったそうです。
小学生の女の子が友人と一緒に、立ち入り禁止の看板が立っていたにも関わらず『あの川』に入ってしまい、そのまま溺れて亡くなってしまったということでした。

ゾッとしました。

夕刻17時に鳴る防災行政無線の『夕焼け小焼け』。
女の子に手向けらた花束に旦那さんが手を合わせたその夜、それが私たちにだけ聞こえるように流れたのです。

それはまるで、

「私はこの時間に死んじゃったんだよ」

女の子がそう教えてくれているような気がしました。

そう思った時、もちろん怖いという気持ちもありましたが、それ以上に、川で溺れた幼い女の子はもっと怖かっただろうな、と、可哀そうで、切ない思いが込み上げてきました。

これからは、道端や川岸で手向けられている花束や折り鶴を見かけた時は、心の中で冥福を祈り、間違っても冷やかしで拝んだりしてはいけないと、強く心に決めた体験になりました。

コメント

タイトルとURLをコピーしました