体験場所:岡山県K市の某レンタルビデオ店
これは15年ほど前に母から聞いた、母の友人の体験談です。
不気味だったので今でもよく覚えています。
その母の友人の名前を仮にAさんとしておきます。
Aさんは当時、岡山県K市の某レンタルビデオ店でパートとして働いていたそうです。
その日もAさんがレジに立って店番をしていると、レジからだいぶ離れたビデオ棚の前に、小汚い格好をしたおじいさんがいることに気が付きました。
遠目から見てもみすぼらしい服装で、髪や髭がボサボサに伸びているのが分かったそうです。
(ホームレスの人かな?店内で見かけるなんて珍しいな。)
Aさんはそう思ったそうです。
その後しばらく作業をして、ふとさっきのおじいさんに目を向けると、先程よりもレジに少し近付いていることに気付くと同時に、おじいさんの感じに何か違和感を覚えました。
改めておじいさんの姿を凝視して、Aさんはハッとしたそうです。
そのおじいさんの身体が透けているんです。
おじいさんの身体を透かす用に、後ろの背景がぼんやり見えるんです。
それに気付いたAさんは途端に恐怖に襲われました。
霊感というものが全くなかったAさんは、当然それまで幽霊なんてものを見たことがありません。
初めて目の当たりにしたその存在に、Aさんは背筋が凍り付いたまま、ただただ呆然と見開いた目で、そのおじいさんの幽霊を見つめていました。
すると、そのおじいさんの首がゆっくりと動き、その精気のない目がジーッとAさんに向けられたそうです。
そのまま徐々に徐々に、おじいさんはAさんののいるレジに向かって近付いてきます。
その場にいる店員は自分だけ。
他にお客さんはいましたが客に助けを求めることもはばかられ、Aさんはただただそのおじいさんから目が離せないでいました。
その間にも、だんだんおじさんの幽霊は近付いて来ます。
気持ち悪いのが、透けているので普通の人間と違って距離感が上手く掴めないのだそうです。
「その幽霊が遠くにいるような気もするし、凄く近くにいるような気もする」
Aさんは母にそう語っていたそうです。
目の前まで迫ったおじいさんの格好はやっぱり薄汚れていて、
(間違いなくホームレスだ…)
Aさんはそう確信したそうです。
気が付くとAさんの目と鼻の先にまで迫っていたおじいさんの幽霊、ですが、何をするでもなく、ただただジと~っと恨めしそうな表情でAさんを見つめるだけなのだそうです。
そのままどれくらいの時間が経ったのか分かりません。
そのうちレジに別のお客さんがやってきて、ハッとしたAさんが慌てて接客しているうちに、いつの間にかその幽霊はいなくなっていたそうです。
そんな心霊体験をして以来Aさんは、それまで純粋にエンタメとして楽しんでいたホラー映画や心霊番組なども、恐ろしくて一切見られなくなってしまったそうです、
因みに、そのおじいさんの幽霊をAさんが見たのはその一回きりだそうです。
なぜAさんに突然『霊』の姿が見えてしまったのかは分かりません。
「でも、きっとあのおじいさんの霊は、自分の存在に気付いてもらえたから、私の元に近付いてきたんだろうな~」
Aさん自身がそう語っていたそうです。
その話を聞いた時、私にはただただ怖いとしか思えませんでした。
ですが、ホームレスのような格好で彷徨うおじいさんの幽霊は、もしかしたら、もっと自分のことを見て欲しかったのかな、生前に寂しい思いをされて未練が残ったのかな、と、今ではそんな風に、少し切なく感じるんです。
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