心霊スポット:岐阜県『朝鮮トンネル』
これは仲の良い後輩の男の子から聞いた話です。
その後輩を仮にAとします。
今から5年前、Aがまだ大学生だった頃、友人たちの間で心霊スポットに行くのが流行っていたそうです。よくありますよね、大学生のノリで心霊スポットに肝試し。
いかにも『大学生』っぽくノリが良いAも、当然その頃は友人達と心霊スポット巡りに明け暮れていました。とはいえ全く幽霊を信じていないAにとって、心霊スポット巡りは怖さを楽しむというより、単純に友人達と何かしていることが楽しかったんだと思います。
Aが住む岐阜県岐阜市の周辺には、有名な心霊スポットがいくつかあり、その頃には既にAはそのほとんどに行き尽くしていたそうです。
ただ、そのAにも、まだ行ったことがない場所が一つだけありました。
それが、岐阜の有名心霊スポット『朝鮮トンネル』です。

朝鮮トンネルに行った人の多くが実際に心霊現象を体験すると言われ、全国的にもとても有名な心霊スポットです。
本来の名称は『二股トンネル』というのですが、それが朝鮮トンネルと呼ばれるには、ある理由がありました。
私もあまり詳しくないのですが、掻い摘んで話すと、そのトンネルでは昔、トンネルを掘るために朝鮮人が強制労働させられていて、使い物にならなくなると、そのままトンネルの壁に生き埋めにされてしまった、という噂があるらしいのです。
なにぶん信憑性の怪しい話ではありますが、実際に心霊現象が多発するという噂が付きまとっているトンネルであることは間違いありません。
Aはその日、大学の友人たちと、そのトンネルへ向かうことになったそうです。
『どうせ何も起きないし(笑)』と軽く思っていた、と、Aは後に言っていました。
7月なのに珍しく涼しかった夜、Aを含めた友人5人は車で朝鮮トンネルへと向かいました。
「おい、怖がんなよ~」
「怖がってなんてねーし!」
そんなお決まりの軽口を叩きながらトンネルに向かっていると、車はいよいよ暗い道に入り、辺りには嫌な雰囲気が漂ってきました。
整備されていない道には当然街灯もなく、ガタガタと車を揺らしながら、ヘッドライトだけが頼りの道を進みます。

「雰囲気やっべー!」
「ガチで出そうやん!やばっ!笑」
外の雰囲気とは対照的に賑やかな車内でしたが、友人のBだけが何やら不安げな顔をしていました。
「おいB!どーした!?笑」
「びびってんのか~!笑」
などとみんなが言うと、Bは震えたようなかすれ声で、
「さっきから、誰かに見られてる気がする…」
と言うそうなのです。
車内は一瞬シンッと静まり返り、
「ば、ばっかじゃねーの!」
「んなわけねーじゃんっ!」
と、Bのことを馬鹿にするように再び盛り上がったそうですが、明らかにその時から、みんなの雰囲気が変わったとAは言っていました。昔から霊感が強いBのこの手の発言には、みんなをビビらせるには十分な威力があったそうなのです。
そうして目的地である『朝鮮トンネル』に着くと、当然ですが、周囲にはA達の他に誰もいません。
恐る恐る車から降りてみると、そこには重苦しい暗いトンネルが口を広げているだけで、他に目を引くものは何もありません。
みんな口には出しませんが、相当ビビっていることがピンっと張り詰めた空気から伝わってきたそうです。
「じゃ、じゃんけんで負けたやつが、な、中に入いろーぜ」
そう誰かが言い出し、みんなもそれを了承しました。
「じゃんけんぽんっ!」

負けたのはAとBでした。
「おーい、まじかよー!まあいいわー、行ってくるわー!お前ら先帰るんじゃねーぞ!」
相当怖かったそうですが、強がってAはそう捨て台詞を残し、Bと一緒にトンネルに入って行ったそうです。
中は暗く、心なしか空気も冷たい。
さっきまで余裕ぶっていたAもさすがに怖かったそうなのですが、さっきから震えているBの手前、弱気な言葉は吐けず、
『さ、さっさと中見て、外でよーぜ』
と、Bを引っ張ります。

そのまま恐る恐る先に進む二人でしたが、奥に進むに連れ、Bは更に無口になっていったそうです。
「、、、も、もう出よう」
Bがそう口にした時は、流石にAもその雰囲気を察し、すぐにトンネルを引き返したそうです。
結局、トンネル内では何も起きず、
「やっぱなんにも起きねーじゃんっ!」
と、みんな内心ホッとしながら車に乗り込み、家路に就いたのだそうです。
Bもトンネルを出てからは、少しずつ元気になったようでした。
その日から少しして、トンネルに行ったメンバーに少しずつ妙なことが起こり始めたそうです。
まず、Bの祖母が亡くなりました。
とても元気なおばあさんだったそうですが、それは突然のことだったそうです。

他のメンバーにも、祖父が亡くなったり、事故に遭ったり、病気になったりと、次々と悪いことが起こりました。
Aも例外ではなく、トンネルに行った1週間後、事故に遭いました。

車の事故でしたが、幸い怪我人もなく、さほど大きな事故にはならなかったそうです。
ですが、その1週間後、Aはまた車の事故に巻き込まれたそうなのです。
他の友人の身に起きた不幸なども含めて考えると、Aも流石に先日行った朝鮮トンネルのことを疑い始めました。
ですが、結局それからは何も起こらず、トンネルのことも次第に忘れていったそうです。
その1年後の7月のことでした。
またしてもAは車で事故を起こしました。
追突事故です。
動物の飛び出しが原因の事故でした。

更にその1年後の7月、Aはまた車で事故を起こしました。
それもやっぱり追突事故でした。
(いつもこの時期に事故を起こすなんて、、、)
そう思って、これまでの事故の日付を確認してみると…
3年連続同じ月、同じ日に事故を起こしていたそうなのです。
ゾッとしたAは、すぐにお祓いを受けに行きました。
「絶対に挑戦トンネルへ肝試しに行った呪いだ…」
そう話すAは、あれ以来、心霊スポットには絶対に行かないと決めたそうです。
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