【怖い話】心霊実話|短編「意志疎通」静岡県の恐怖怪談

投稿者:ぺぺこ さん(20代/女性/自由業/静岡県在住)
体験場所:静岡県裾野市内の某アパート
【怖い話】心霊実話|短編「意志疎通」静岡県の恐怖怪談

その頃はまだお金がなく、静岡県裾野市内の町はずれにある古いワンルームアパートで一人暮らしをしていた時の話です。

近所の道端ではタヌキやハクビシンを度々見かけるような寂れた場所で、夜中になると屋根裏に入り込んだネズミが『タタタタ!』と走り回る音で眠れないなんてことも日常茶飯事でした。

それでもお金がないので引っ越すことも出来ず、我慢しながら生活していると、ある頃から不思議なことが起こり始めたんです。

部屋のどこかから異臭がし始めたのです。

とにかく何かが腐ったような腐乱臭というのでしょうか?鼻を摘んでいても気持ち悪くなるような臭いです。

冷蔵庫や食料庫を綺麗に掃除しても臭いは消えず、もしかしたら押入れの奥にネズミか何か動物の死体があるのかもしれないと思い、中のものを全て出してみましたが、それらしいものは何も出て来ませんでした。

そんな臭いの中で数日暮らしていると、とにかく気持ち悪くなってしまい、藁にもすがる思いで当時付き合っていた彼氏を部屋に呼んだんです。

「俺、この部屋なんか苦手だわ…」

部屋に入るや否や、彼はそんなことを言い出しました。
子供の頃から霊感があると言う彼。その彼が私の部屋に何か違和感を感じたらしく、私まで余計に気味悪くなってしまったんです。

「特にこの押し入れ、絶対に開けたくない…」

そんな嫌なことを言いながら、しばらく部屋の様子を見ていた彼は、

「この臭い、動物とか食べ物の臭いじゃないぞ。絶対に盛り塩しておいた方がいいって。」

そう言って彼は帰ってしまったんです。

彼に部屋を視てもらったことで余計に怖くなった私は、とりあえず彼が言うように玄関や部屋の隅に盛り塩を置いてみたんです。

その日の夜、気付くと臭いが消えていました。
原因が全く分からなかった腐乱臭が突然きれいさっぱり消えたんです。

(盛り塩が効いたのかなぁ…だとしたら、やっぱり霊の仕業?)

なんてモヤモヤした気持ちは残りながらも、不思議なこともあるもんだと、とりあえず臭いが消えて私はホッとしていたんです。

それから1ヶ月ほど経った頃でした。
再びあの臭いがするようになったのは…

ですが、以前とは違い常に臭っているのではなく、何かの拍子にフッと鼻を突く感じです。

しかも、その臭いがした日の夜は決まっていつも、寝ていると誰かが上に乗っているような感覚に襲われたんです。

でも、どういうわけかその頃の私は、恐怖感覚は麻痺していたのか、

「まぁ危害を加えてくるわけでもないし、悪い霊じゃないのかなぁ~」

と、いつもなら直ぐに彼に泣きつく怖がりの私が、なぜかそんな風に呑気に考えていたんです。

それからも不思議な現象は日増しに増えて行きました。

一人暮らしのはずの部屋から誰かの足音が聞こえたり、締めたはずの戸棚が開いていたりと…
でもやっぱり私は怖がることもなく、そんな部屋で普通に暮らし続けていたんです。

ある日の真夜中のことでした。

私が部屋で縫い物をしていると、消えていたはずのテレビが突然パチッと点いたんです。

もちろんビックリはしたのですが、やっぱり私はどうかしていたのだと思います。

全く怖がるどころか、私は笑いながら、

「ちょっとー、やめてよーw」

なんて声を掛けたんです。

すると、勝手に点いたテレビが今度は勝手に消えたのです。

驚きました。
霊と意思疎通が出来たと思ったんです。

私は何とも言えない不思議な気持ちになり、やっぱり怖いというよりは、むしろその事に興味が湧き、

(次に同じようなことが起きたらどんなやり取りをしようかな?)

そんなことを考えるようになっていたんです。

それ以来、不思議なことはパタリと起こらなくなりました。
異臭はもちろん、物音一つしなくなったんです。
それが何となく寂しく感じたことを覚えています。

今、あの頃のことを思い返しても、やっぱり怖さはなく、あそこにいた何かが、ただ私に気が付いて欲しかっただけなのかな?と思ってしまいます。

このことは誰に話しても「夢だったんじゃない?」と一笑されてしまいますが、私にとっては忘れることのない不思議な体験です。

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