
体験場所:石川県 某中学校
これは、今から11年ほど前、私が中学生になったばかりの頃の体験です。
私の通っていた中学校では、部活動への加入が必須でした。なので、私はなんとなく興味本位で吹奏楽部に入部しました。
夏が近づくと、コンクールへ向けた練習が始まります。
当時の私は初めてのコンクールに胸を躍らせていて、その高揚感は今でもはっきりと覚えています。
コンクールでは、「課題曲」と「自由曲」を演奏します。
自由曲は部員全員の多数決で決めるということで、部室にあった候補曲のCDをラジカセで再生し、全員で聴き比べる時間が設けられました。
特に三年生にとっては最後の大会なので、曲選びにも自然と熱が入り、鑑賞だけで一日の部活動が終わることも珍しくありませんでした。
これは、そんなある日の部活中の出来事です。
吹奏楽部には「木管・金管・打楽器」といったパートがあり、普段の部活動では、まずパートのメンバーごとに分かれて練習し、その後、全体で集まって練習するという流れでした。
私は金管楽器担当だったので、その日もまずは金管パートで集まり、いつも通り練習をしていました。
すると突然、先輩がこんなことを言い出したのです。
「放送室にさ、昔の吹奏楽部のコンクール練習の録音があるらしいよ」
私たちの学校は昭和初期に建てられた古い校舎ですので、ずっと以前の録音が残っていてもおかしくありません。(ちなみに今はもう廃校になっています)
その話を聞いた瞬間、私たちは一気にテンションが上がりました。
「え、めっちゃ昔の先輩の音、聴けるやん」
私たち金管パートが練習で使っていた部屋は集会室で、その隣がちょうど放送室でした。私たちはすぐに放送室へ向かうと、全員でその音源を聴いてみることにしたのです。
デッキにCDをセットし、再生ボタンを押します。
スピーカーから流れてきたのは、驚くほど綺麗な演奏でした。
音の一つ一つから、当時の先輩たちの熱意や真剣さが伝わってくるようで、
「同じ学校で、先輩たちはこんな風に練習してたんだ」
と、不思議な親近感を覚えました。
まるで、その場に過去の先輩たちがいるような感覚がして、私たちは自然とその美しい演奏に聴き入りました。
その時です。
「……ブチッ」
突然、演奏が途切れました。
「え?」
誰かが止めた様子もありません。
さっきまで滑らかに流れていた音楽が、まるで強引に切断されたように突然消えたのです。
部室に一瞬、妙な静けさが広がりました。
——次の瞬間
「俺じゃないよ」
低い、男の声が聞こえました。
異様なほど低く、どこか機械で歪めたような声が、スピーカーからはっきりと聞こえたのです。
そしてまた、
「……ブチッ。……♪~♪~♪~」
何事もなかったかのように演奏の続きが流れ始めました。
「……え?」
誰もすぐには反応できませんでした。
今、何が起きたのか。それを理解するより先に、数秒後、「ひっ!」と、部員の誰かの引きつった悲鳴が聞こえました。
聞き間違いだろう、と誰かが言いました。自分に言い聞かせるように、気のせいだと。
でも、違いました。
もう一度再生しても——
やはり同じところで音が途切れ、
「俺じゃないよ」
はっきりと同じ声が入るのです。
そして何事もなかったかのように演奏が続く。
何度再生しても同じでした。
学生の声とは思えませんでした。
不自然なほど低い声で、どこか“作られたような声”には違和感がありました。
いたずらという可能性も考えましたが、当時の機材であれほど自然に、演奏の合間に声を入り込ませることができるのか。しかも学生にそれができたのか。と、どこか納得がいかなかったのです。
結局、あの声が誰のもので、何が目的だったのか、全く分かりませんでした。
あれから十年以上が経ちますが、今でも時々ふと思い出すことがあります。
音が途切れた瞬間のあの違和感と、そして、
「俺じゃないよ」
あの妙に低い声。
なぜこのセリフなのか。
何があなたじゃないの?何が?
じゃあ、いったい、誰なの?

他にも「石川県の怖い話」複数ございます。
→ 石川県で体験した怖い話(実話)

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