体験場所:愛媛県某市の廃病院
今から遡ること約20年ほど前、私が高校生の頃に友達から実際に聞いた話です。
私の生まれ育った愛媛県の小さな田舎町には、幾つかの心霊スポットと呼ばれる場所がありました。
この話をしてくれた私の友達が、当時付き合っていた彼氏のA君は、そんな心霊スポットを夜な夜な巡っては写真を撮り歩くような、不謹慎と言うか、ちょっと悪ノリが過ぎるようなところがありました。
そんなA君のような心霊スポットマニア達にとって、ある程度名前の知られる廃病院が、その田舎町にはありました。
この廃病院なんですが、私の通学路の近くにあったため、たまに前を通りかかることもあったのですが、まずその見かけからしてかなり不気味なものでした。
周囲には木々が鬱蒼と生い茂り、建物はツタに覆われていて、昼間でも薄暗く重苦しい雰囲気を醸し出していました。
廃病院ですので誰の出入りも無く、『立入禁止』のテープが敷地の入り口に貼られていました。
そんな気味の悪いところに、A君を含めた男子数人が、深夜に懐中電灯を持って悪ふざけで忍び込んだそうなのです。
彼らは病院内に入ると、そのだだっ広い院内を見て回ったそうなのですが、注射器やハサミ、開いたままのキャビネットなど、院内には運営時の設備が生々しく置かれたままで、A君たちはそれを写真に収めながら徘徊していました。
ある部屋に入ると、床一面に紙が散乱していたそうです。
A君が拾い上げて確認してみると、それは患者のカルテだったそうです。
女性患者の名前や症状などがこと細かく書き込まれています。
さすがにA君も不気味に感じ、写真を撮ろうか一瞬戸惑っていると、
「こら!」
と、大きな声が聞こえました。
どうやら巡回の警備の人が見回りに来たようでした。
「すみません!」
慌てて謝ったA君達は、それなりに厳重注意を受けた後、その場は解散となったそうなのですが、気が動転していたのでしょうね。A君は先ほどのカルテを手にしたまま院外に持ち出してしまったそうなんです。
今戻しに行くのも都合悪いし、その辺に捨てるのもなんか気が引けるしで、しょうがなくA君はそのカルテをそのまま家に持ち帰ったそうです。
その翌日のことでした。
A君のPHSに一本の電話が掛かってきました。
番号非通知のその電話に出ると、
『…カルテ…かえしてください…』
と、知らない女性のか細い声が聞こえてきたのだそうです。
A君は全身が凍り付きました。
その一言で電話は切れたそうなのですが、A君はすぐにあの廃病院に行き、元あった場所にカルテを戻したそうです。
それ以来、A君はいたずらに心霊スポットに行くことはなくなったと、私の友達は嬉しそうに話してました。
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