体験場所:岩手県M市の某保育園
私が20代の頃に勤務していた岩手県M市の某保育園での出来事です。
私たち職員の仕事は、だいたい夜7時半頃にはお預かりしている子供たち全員のお迎えを済ませ、その後で翌日の準備をするというのが基本の流れでした。
その日も子ども達が帰った後、園全体での打ち合わせがあったため、一つの保育室に職員全員で集まっていました。
それぞれの子供の情報共有を済ませ、今後の行事などについての打ち合わせをして、時間も遅くなったしそろそろ終わろうかという時でした。
突然、園内の廊下を勢いよく走る足音が聞こえました。

明らかに子どもの走り方です。
職員しかいないはずの園内をなぜか子供が走っている…みんな驚いて言葉も出ず、室内に静寂が流れました。
(ここに通っている園児の誰かが入ってきたのかも…)
そう思いましたが、あまりに時間が遅い上、もしそうなら当然一緒にいるはずの保護者の気配もありません。
そんな思案する間もなく、今度は部屋の前の廊下に並べ掛けてある子ども達の着替えバッグを、順番に叩きながら走り抜ける足音がしました。

それは普段から子ども達がよくやるイタズラで、その都度「落ちるから叩いちゃダメ!」と言って、これまでも散々教えてきた、まさにその時の音でした。
ここまであまりにも一瞬の出来事だったので、一体ここで何が起きているのか、私達は考える暇もありませんでした。
(子供はみんな帰したし、玄関も施錠しているはずなのに、どうして…?)
誰もがそう思って固まっていました。
数秒の沈黙の後、
「・・・これ…何?・・・幽霊?」
誰かがそう言うと、全員が顔を見合わせました。
ですが私たちにとっては普段から聞き慣れた音だったためか、不思議と怖さは感じません。
それにこの時点で、私だけではなく、恐らく他の職員も全員が確信していることが1つだけありました。
「…うちの園児ではない」
根拠はありません。
ですが、いつも接している子ども達とはどこか気配が違ったんです。
その時でした。
普段から霊感が強いという女性職員がおり、彼女がすかさずドアを開けて廊下を確かめました。
・・・廊下には、誰の姿もありませんでした。
彼女いわく、もう先程の『子供』の気配はない、と。
後日、保育中に、先の女性職員の耳元で、
「遊ぼう。」
と囁く子供の声がしたそうです。

もし成仏できずに彷徨っているのなら、気の毒だと思った彼女は、
「ここにいたらだめだよ、行くことろがあるでしょう。」
と、優しく諭してあげたそうです。
以来、そのような現象が起こることはありませんでした。
私たちが聞いた足音は一体なんだったのでしょうか?
やっぱり彷徨う子供の霊だったのでしょうか?
職員全員が体験したので勘違いとかではないはずです。
「もしかしたら、なにか可哀そうな理由で亡くなった子供が、誰かと遊びたくてこの保育園に出てきたのかもしれない…」
私たちはそう思うことにして、怖いというよりも、少し寂しい気持ちになったことを思い出します。
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