体験場所:長野県の某山荘
これは心霊現象なのか、それ以外の何かなのか、今でも理解できません。
皆さんご存知の『こっくりさん』にまつわるお話です。
当時、私は私立の中学校(男子校)に通っておりました。
その学校では年に2回、希望者のみが参加出来る『スキー合宿』が行われており、それは部活動などの厳しい合宿とは違い『スキーを覚える為』という、少し緩めの名目で行われているものでした。
とは言え、体育大学からアルバイトの学生を呼んだり、生徒のレベルに合わせてクラス分けをしたり、合宿最終日にはテストみたいなものも行われたりと、結構本格的な合宿内容でした。
1週間の予定で行われるそのスキー合宿は、12月と3月、期末テスト後の長期休みの期間に行われていたのですが、あれは私が中学2年の時、12月の合宿に参加した時のことでした。
期末テストも終わり、クリスマスの雰囲気も相まって、その合宿に参加した生徒は全員遠足気分でした。
私もその時は既に3回目の参加でしたので、初回の時は緊張しましたが、3回目ともなるとちょっとした楽しいイベント気分でした。
因みにこの合宿、真冬の12月に行われる合宿の方は、いつも宿泊場所が決まっていて、それは学校が所有していると思われる長野県のとある山荘でした。
山荘といっても100人以上は泊れそうなくらい大きく、食堂もお風呂もとても広かったです。
ですが宿泊部屋はというと、あくまで合宿用なのであまり広くはありませんでした。
4人1部屋で、2段ベッドが2つ向かい合って一杯一杯という具合です。もちろん部屋には風呂もトイレもありませんでした。
それでも、それぞれに自分のベットが与えられるだけで嬉しいものでした。
私立中学という事もあり、普段の授業や生活態度は結構シビアで、身なり、持ち物、素行など、厳しく指導されたのですが、この合宿の時だけは寛容になり、マンガ、ゲーム、お菓子の持ち込みも自由で、仲の良い友人達と緩い感じのお泊りに、浮かれない訳がありませんでした。
そんな風に楽しい時間を過ごしていた、合宿2日目の夜のことです。
私の部屋には、同じクラスで仲の良い友人のAがいました。
最初の内は一緒に携帯ゲームなどをして遊んでいたのですが、Aが急に「こっくりさんをやろう!」と言い出したのです。
Aも私もオカルト好きですが、
(中学生にもなってこっくりさんって・・・)
というのが私の正直な気持ちでした。
しかし、Aの思惑は少し違っていたのです。
「こっくりさんで〇〇君を騙そう!」
Aは声高々にそんなことを言うのです。
その仕組みは簡単で、ターゲット以外は全員さくら。
「私たちの部屋でこっくりさんをやっていて、今、大変な事になっている!」と、別の部屋に噂を広め、ターゲットの同級生を部屋に呼んでその様子を見せる。
そこで、こっくりさんをしている人が体調が悪くなったフリをしたり、周りで見ているサクラが「変な人影を見た!」とか「お経が聞こえてきた!」と囃し立てたりして、お化け屋敷的な『やらせこっくりさん』を演出し、ターゲットを怖がらせようとAは考えたんです。
実際に決行してみると作戦は大成功。
1人目のターゲットは見事に騙され、怖がりながら部屋に戻っていきました。
もちろん、その場でネタバラシはしません。
すると案の定、1回目の噂が話題になり、2回目のターゲットB君を簡単に部屋に誘い込むことが出来ました。
先ほど部屋には2段ベッドが向い合せになっていると言いましたが、そのこっくりさんは、向かい合う2段ベッドの間の床に台を置き、その上に例の50音が書いた紙を置いて行いました。
その紙の上に置いた10円玉に、実際にこっくりさんをやる二人が指を乗せ、お互い両方のベッドの1階に腰をかけて向かい合っています。
部屋は広くないので、他の観客はベッドの2階から眺めたり、通路から見ていたり、1階のベッドの空いてるスペースに座ったりと、ギャラリーのサクラがあちこちに居る感じです。
そんな中で2回目のターゲットB君に向け、やらせこっくりさんを始めたのです。
B君は1階のベッドの上に座っていました(逃げられないようにさり気なくそこに誘導しました)。ベッドに腰かけてこっくりさんをやっている人を、斜め後ろから見る感じです。
10円玉は勝手に動くし(動かしてます)、壁にかけてあったリュックは落ちるし(サクラが落とします)、しかもB君はその手の事を信じるタイプらしく、見る見る顔つきが変わっていくのが分かりました。
そこで初めて気が付いたのですが、どうやらB君はいつもお守りを持ち歩いているらしく、その時もお守りをがっしり握り締めながら、やらせとは知らず怯えた表情でこっくりさんの様子を見ていました。
さて、いよいよこっくりさんも佳境に入り、やっている2人のうちの1人が体調を崩す場面がくるのですが、そこからB君の様子がおかしくなっていったんです。
私はB君のいる向かい側のベッドの2階にいて、サクラをしながら下の様子を眺めていたのですが、ふとB君の方を見ると、B君が何かブツブツ喋っていることに気が付きました。
「あついよ、あついよ…」と、ぼんやりと呟くような声でB君は言っていました。
実際にこっくりさんをやっている2人もB君の異変に気付いていたのですが、演技中なのでこっくりさんを続行しています。
でも、気になった私はさり気なく1階に降り、間近でB君の様子を見てみたのですが、やっぱり変なのです。
B君はこっくりさんを全く見ていないのです。
顔を上にあげ、1階のベッドの天井を見上げていたんです。
2段ベッドなので、1階のベッドの天井と言っても、それはB君のすぐ上。
ベッドはパイプベッドのような作りで、1階も2階も寝る部分の床は細い板状の棒が格子状に組んであり、その上にマットレスが敷かれ、古いベッドらしく少したわんでいます。
いや、でも、B君が見ている天井のたわみ方は尋常ではなかったのです。
上に人が乗っていてもそんなにたわむはずがありません。
2階に大きな鉄球でも乗せているのかと思うくらい、鉄の格子が下にたわんでいて、もうすぐB君の頭に届くくらいです。
同じベットに座ってこっくりさんをしている友人は、ベッドにお尻は乗せているものの、身体のほとんどはベッドの外側に出ている状態なので、天井の異常なたわみには気付いていないようでした。
その嘘みたいな光景に私は息を飲み、(このままたわみ続けたらB君が押し潰される!)という事だけが頭に浮かびました。
その後、なんと言ったかは覚えてませんが、私はこっくりさんを止めさせ、みんなに部屋の外に出るように指示したような気がします。
でも、みんなが慌てて部屋の外に出る中、B君だけはベッドの上で仰向けになって寝ていたんです。
まるで何かに取り憑かれていたのか、B君は放心したような目で大きくたわんだ天井を見上げていました。
既に最初に座っていた状態では、頭に当たるところまで天井が下がって来ていて、もしかしたらB君はその天井を見続ける為に仰向けになったのかも知れません。ベッドからは金属がきしむような音がしていました。
私は急いでB君をベットから引き摺り降ろし、抱えるようにして部屋から出ました。
そして、その時なぜか、私は部屋の扉を閉めたんです。
まるで、中から何かが出てこないように…
すぐに騒ぎを聞きつけた先生が来て、再び部屋のドアを開けて中に入りました。
私は怖くてドアから離れていました。
そして部屋から出て来た先生は私たちを叱りました。
あの信じられないほど大きくたわんだ上段ベットの床を見たら、当然先生も怒るだろうと思っていました。
ですが、どうも先生の話がおかしいんです。
たわんだベットの床のことを怒っているのは間違いないのですが、先生の言うたわんだ床というのは、どうやらB君が座っていたベット1階の床らしく、2階の床は何の問題もないと言うのです。
そんなはずはない、絶対に先生は勘違いしていると思いました。
私も含めてその場に居た数人が、2階の床が大きくたわんでいたのを見ていたのですから。
先生が話している途中にも関わらず、私はもう一度部屋の中を覗いてみました。
そして自分の目を疑いました。
さっきまであんなにたわんでいた2階の床が、全く変形していないどころか、その形跡すらありません。
ただ、それとは対照的に、B君が座っていたベット一階の床が、部屋の底に付くほど大きくたわんでいたんです。
どういうことなのか、全く訳が分かりませんでした。
ですが、考えてみるとあの時、たわんでいたはずの2階の上にも数人のサクラがいたはず。
それなのに、その誰一人として騒いでいる様子はありませんでした。
やはり、あの時たわんでいた床は2階ではなく1階だったのでしょうか…?
だとしたら、B君が見上げていたたわんだ天井って、もしかしたら、B君が座っていた1階の床だったのか・・・?
今でもアレが何だったのか全く分かりません…
遊び半分でやってしまった『やらせこっくりさん』の影響なのでしょうか…
だとしても、あんな空間がゆがむような異次元現象ってあるのでしょうか…
それに、B君が見上げていた天井の、尋常ではな量のたわみ…
あれだけのたわみが人間の体重で発生するとは思えませんし、もしかしたらあれは、降霊したこっくりさんの『重み』だったのでしょうか…?
因みにB君はその時の事を全く覚えていないそうです。
コメント
YouTubeまたみたいです。
お待たせしてしまい申し訳ございません。
現在、誠意制作中でございます。
もうしばらくお待ち頂ければ幸いです。
何卒よろしくお願い致します。