【怖い話】都市伝説|短編「消灯の瞬間」東京都の地下鉄『銀座線』外苑前駅に纏わる恐怖譚

投稿者:あらん さん(50代/男性/フリーランス)
体験場所:東京都 地下鉄銀座線 外苑前駅
【怖い話】都市伝説|短編「消灯の瞬間」東京都の地下鉄『銀座線』外苑前駅に纏わる恐怖譚

私が高校生だった頃の話です。

当時、都内の地下鉄のうち銀座線と丸の内線では、配電の仕様上、電車が駅に到着する直前に車内灯が一瞬消えるという現象が起きていました。

その際、乗降扉の脇についている小型の非常灯が点灯するので完全に真っ暗になるわけではないのですが、それでも他の乗客の表情が分からなくなる程度には暗くなったのです。

そしてこの頃、私が通う高校でこんな噂が流れました。

「銀座線渋谷行の一番後ろの車両に乗って、車掌室越しに後方のトンネルを見ていると、外苑前駅に到着して車内灯が消える瞬間、トンネルを横切る白い女の霊が見える」

元々この噂は、私の同級生のS君が他校の生徒から聞いて来たものでした。

S君によれば、この噂には更にこんな続きがあるのだそうです。

「女の霊はトンネルの右側から左側に向けてすぅーっとトンネルを横切る。どうやらホームから投身自殺した女の地縛霊らしい。ただ、この霊を面白がって興味本位だけで見に行くと、霊がそばにやってきて呪いをかけられる。呪いをかけられると霊に引き寄せられ、いつか同じように電車に轢かれて死ぬ。」

何人かの同級生と一緒にS君からこの話を聞いていたら、そのうちの一人、K君が、

「じゃあ、今日それを見に行こうよ。」

と言い出しました。

「いや、やめとけよ。興味本位で見ると呪いがかかるんだろ?」

と、私はたしなめたのですが、

「いや大丈夫。お前も一緒に行こうよ。お前、霊感ないって言ってただろう?霊感がない人間には霊は近寄らないんだから、お前がバリアになって呪いからガードしてくれよ。」

と、K君は言い返してきました。

今にして思えばよく分からない理屈でしたが、私もS君もなぜかK君のその言葉に言い包められ、その日3人で外苑前に行ってみることになったのです。

その日の放課後、私達3人は学校帰りに地下鉄を乗り継いで、銀座線の青山一丁目駅にやってきました。

そこから外苑前駅は、渋谷行に乗って次の駅です。

S君とK君もさすがに緊張してきたのか、少し顔色が悪くなっています。

「やっぱり、やめとこうぜ。」

私がそう言うとS君は頷きかけたのですが、K君は、

「ここまで来て引き返したら臆病者だ。俺たちは興味本位で来てるんじゃない。霊を慰めに来てるんだぞ!」

と、またしても胡散臭い屁理屈をこね、そこにちょうどやってきた渋谷行の電車にそのまま乗り込んでしまいました。K君をひとりで行かせるわけにもいかず、仕方なく私とS君も続けてその電車に乗りました。

青山一丁目から外苑前への線路は緩くカーブしています。そのカーブが直線になった時、いよいよ電車は外苑前駅に進入して行きます。

私達3人は、青山一丁目駅から最後尾の車両に乗り込み、更に車両の一番後ろ、車掌室との境のガラス窓から流れ行くトンネルの中を凝視していました。

ゆっくりと青山一丁目駅の灯りが遠ざかり、間もなく電車はカーブに入りました。
すると、トンネル壁面の薄ぼんやりとした黄色い照明以外、トンネル内に見えるものはなくなりました。

徐々に線路がカーブから直線に変わり、電車は外苑前駅への侵入を始めます。
車輪とレールの摩擦で発生する軋み音が響き、それがなくなった瞬間、ふっと車内灯が消えました。

すると、

「おおっ」

って、K君が小さな叫び声を上げたのです。

再び車内灯が点灯し、電車の扉が開きます。

とりあえず私たちは外苑前駅のホームに降り立ちました。

改札に向かう他の乗客を見送るように降りてすぐのホームで足を止めると、K君がポツリと言いました。

「見えた…」

「え!?見えたのか?俺は見えなかったけど…」

S君がそう言います。
私にも、白い影は見えませんでした。

「いや、見えた。左から右に横切る、白い影が見えた…」

K君が震える声でそう言った後、更に続けたんです。

「たぶん、俺は呪われたよ…」

「どうして?どうして呪われたと思うんだ?」

私はK君にそう聞きました。

「S、お前、女の霊は右から左に横切るって言ってたよな…」

「あぁそうだよ、だからKもさっき…って、え?あれ?」

「わかったか?俺が見た女の霊は逆に動いたんだ。左から右へ…」

「そ、そうだな。でも、だからってそれがどうしたんだ?」

「多分さっき、女の霊はトンネルを横切ったんじゃない。電車の中を横切ったんだ。噂通り右から左に…
それが窓ガラスに反射して、俺にはトンネルの中を左から右へ移動するように見えたんだ。

車内が暗くなった瞬間、俺、首筋を冷たい風が吹き抜けるのを感じたんだ。恐らく”それ”が横切ったんだと思う…

俺が興味本位で来てしまったから…呪いをかけられたんだ…」

K君の顔色は、さっきまでより一段と青白く、その呼吸が震えているのが分かりました。

高校を卒業してから、私はK君にもS君にも会うことはありませんでした。

ただ、社会人になってしばらく経った頃、都内の地下鉄である大きな事故が発生し、その事故に巻き込まれた死亡者の名前の中に『K』という名前がありました。

あれは私の知っているあのK君なのでしょうか…
それとも同姓同名の別人なのか…

私はそれを、今も確認できないでいます。

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