【怖い話|実話】短編「臨海学校の寒い夏」心霊怪談(岡山県)

投稿者:tantanたぬき さん(30代/女性/家事手伝い)
体験場所:岡山県T市の某宿泊施設

これは私が小学生の時、臨海学校で体験したお話です。

その年の1泊2日の臨海学校は、岡山県T市の海岸沿いの宿泊施設で行われました。

日中はボート漕ぎをしたり、夜には催しがあったりで、楽しい時間を過ごしていたのですが、ただ、その臨海学校では『ある噂話』が生徒達の間で囁かれていました。

それは、宿泊先のその施設には、各部屋の窓から見渡せる広いグラウンドがあるのですが、その隅にあるトーテムポールの横に、夜中、女の霊が現れるというのです。

トーテムポールに現われる女の霊
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幼い頃から私は、世間で言う『良くないもの』をボンヤリとですが見てしまう体質です。
そのせいなのか噂を聞いていたからなのか、実際、日中に件のトーテムポールの近くを通った時、私は嫌な感じを覚えたのです。
ハッキリとはしませんが、それは何となく湿った感じの気持ち悪い違和感でした。

夜になり、食事や入浴、催しも終えて、各グループで大部屋に戻り就寝となりました。

ですが、クラスメートとのお泊りで皆テンションが上がっていたせいか、部屋を暗くした後も、友人同士で色んな話をしていました。恋愛話や今日あった出来事、夏の定番の怖い話とかもしていました。
そのうち、一人また一人と寝静まっていき、そんな風にいつの間にか就寝を迎えていたのです。

その夜中、私はふと目が覚めました。
部屋には時計が無く、今何時なのかも分からないまま私は暫くボーッとしていました。

ふと気が付くと、寝る前には閉めたはずのカーテンの一部が開いていて、ユラユラと揺れていました。

(冷房を付けてるから窓は閉めたはずなのになぁ~。)

ボーっとした頭でそう考えながら窓に近付くと、校庭に何かが見えました。

少し遠くて見えにくいのですが、それは黒いモヤをまとったような、髪の長い女でした。

それが、私たちがいる宿舎の方に向かって、一歩、一歩、また一歩と、ユックリと近付いて来るのが分かりました。

どうも、全身が濡れているみたいで、女が歩いた足跡が地面を黒く濡らしています。

近付いて来る女
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その光景を目にした瞬間、私は『トーテムポールの横に立つ女の霊』の噂を思い出し、一気に目が覚めました。

背筋に冷たいものが走り、私は一思いにカーテンを閉めると、頭から布団に潜り込みました。

(絶対に見たらダメなやつだ!)

直感でそう分かり、私は布団の中でガクガクと震えていました。

どのくらい時間が経ったのでしょう…

少しずつ落ち着きを取り戻してきた私は、

(早く寝てしまおう。私は何も見ていない。大丈夫大丈夫…)

そう自分に言い聞かせながら目を閉じました。

無理にでも寝ようと頭の中で猛スピードで羊の数を数えていると、隣で寝ていた友達がバサッと寝返りを打ったのが分かりました。しかも、息苦しそうに唸っている声も聞こえます。

私は薄っすらと目を開き、布団の隙間から外を覗き見ると、先ほど校庭で見た髪の長い女が友達の横に座っていました。

友人の横に座る女
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ゾワッと全身に鳥肌が立ちました。

近くで見ても女の顔は黒いモヤをまとっていてハッキリと見えません。

あまりの恐怖に私はギュッと目を閉じ、

(私は見てない。何も知らない。私は無関係です。何も見てない。)

と、頭の中で繰り返しました。

すると、フッと女の気配がそこから離れたように感じました。

(よかった~)と、ホッと安堵の溜息をつくと、

『ペチャリ…ペチャリ…』

と、今度は部屋の中をユックリと歩き回る女の濡れた足音が聞こえ、私は再び硬直しました。

(こっちに来ないで。そのまま部屋から出て行ってください。お願いします。)

と心の中で願った瞬間、布団の中に誰かの手が入ってきて、それが私の手を優しく握りました。

入ってきた手
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濡れたような、少しふやけているような、氷のように冷たい手。
それは決して離れることないような、力ではない異様な強さを感じました。

極度の緊張と恐怖と、そして諦めの中で、私は気を失いました。

翌朝、目が覚めると、私の手を握っていたものは消えていました。
部屋にはクラスメート達の笑い声が聞こえる穏やかな朝が広がっていて、それが、昨晩の体験は悪い夢だったかのように私を思わせました。

ただ、隣の友達の布団、それに畳の所々が薄く濡れていて、そこから、ほんのりと海水のような磯の匂いが漂っていたことを、今もハッキリと覚えています。

あれは、みんなが噂していた幽霊だったのか…正直、私自身、今も判然としていません。

因みに隣で寝ていた友達は、臨海学校の翌日から1週間ほど体調を崩していました。

後になって聞いたのですが、その友達はあの日、夢の中でずっと、髪の長い女に『寒いです。』『寒いんです。』と、言われ続けていたと話していました。

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