体験場所:東京都S区の某ビル
これは私が就職活動をしていた時のことです。
周囲に比べ、私は就職活動の開始が遅くなってしまったため、その頃は挽回すべく躍起になって就職先探しをしていました。
そんな時友人から、
「就職をアドバイスしてくれるメンターという人がいるから、そういうのも利用してみたら?」
と言われ、早速利用してみることにしたのです。
メールを送ると一時間も経たないうちに連絡が来ました。
「○○時××分に、東京都◆◆区のビルに来て頂けませんか。面接対策のためのノウハウを無料で教えます」
メールにはそのような内容が記載されていました。
(実際はもっとかしこまった文章でしたが)
少し不審には思いましたが、その後、メールに記載されていた電話番号にかけてみると、感じのいい女性が対応してくれたので、私は安心して行ってみることにしました。
指定された場所に着くと、10階はあるであろうビルが立っていました。
私は恐る恐るビルの中に入っていくと、そこにはジャニーズにいてもおかしくないほどの容姿端麗な男性がいて、満面の笑みで迎えられました。
「お待ちしておりました。光川(仮名)さんですね。初めまして。就職メンターの春日(仮名)と申します。どうぞこちらへ」
案内されるがまま付いて行くと、お洒落なオフィスの窓際の席に案内され、そこで春日という男が、
「えっと、就職活動でお悩みだとか」
と、気さくに聞いてきたので、
「はい、そうです。初めてなのでどこから手を付けたらいいか分からなくて。あと、自分が何をしたいかも不明瞭で…」
「なるほど、そうなんですか。因みに今、不明瞭だと言いましたか?」
「はい、言いましたけど…?」
「でしたら、とっておきの会社があるんですよ」
そう言うと、春日はスマホを取り出し操作し始めました。
すると、近くにあったプリンターが作動し、とある会社の概要が記載された書類が出てきたんです。
「こちらのA社は、やりたいことがない人にとっては最高の会社なんですよ」
「はぁ…。そうなんですか」
「えぇ!きっと気に入ると思いますよ!」
正直、面接とは関係のない会社の仲介で終わってしまいましたが、それでも『内定』という甘い二文字に踊らされ、不審には思ったものの、とりあえず私はA社を受けてみることにしたのです。
面接当日、私はそこで衝撃の体験をすることになりました。
面接にて、面接官の簡単な質問にいくつか答えただけで、
「君はもしかしたら、履歴書に書いてあるスキルを活用したいと思っているようだけど、今確信した。そのスキルは実践では使い物にならないよ。君は営業をやるべきだ」
「え!?営業ですか!?」
「あぁ、君は間違いなく営業向きだ。どうだろう、君は特別優秀だから、二次・三次を飛ばして一気に最終面接まで行ってみようか?」
突然の説得に(営業向きであることをしつこく主張してくる)、私は呆然と立ち尽くしてしまいました。
「あの…。少しお時間をいただいても良いですか?」
「う~ん。まぁいいよ。わかった。だけど、うちは結構人気の企業だから、早めに決断してくれると嬉しいな。こちらも採用できる人数には限りがあるから」
確かに人気企業であることを証明するように、面接会場である本社は、表参道にオフィスを構えていました。
私は最終面接を受けるか否か迷ってしまいました。
その迷いを断ち切るために、紹介された会社の口コミや評判をインターネットで調べてみました。
すると、某大手口コミサイトでのその会社の評価は、星5中で星3という評価がなされていました。
そして私はそこで、更なる驚愕の事実を知ることになるのです。
なんと、そこの評価サイトのレビューの中に、春日のフルネームと全く同じ名前のアカウントで、星5の評価をするレビューを見つけたのです。しかも、そのレビューに対するコメントも全てが星5、逆に星5以外のコメントがありません。
他にも星5のレビューはあれど、やっぱりそのレビューに対しコメントを書いている人は極端に少ないんです。つまり共感者がいない星5のレビューばかり。
逆に星1のレビューも多く存在しており、しかもその内容の多くは…
「メンターに騙された。」
でした。
私はその後、メンターとの連絡を絶ち、自分の力だけで就職活動を再開させました。
ですが、これから出る社会の暗部を垣間見たようで、未来に向かい就活する気持ちは重くなり、深い溜息が洩れました。
他人を盲信して生きるのは危険です。
皆さんも気を付けてください。
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