体験場所:栃木県日光東照宮~千葉の自宅
先日、彼女と栃木県日光市の東照宮へ旅行に行った時のことです。
ちょうど記念写真に絶好の場所があったので、私たちは誰かに写真を撮ってもらおうと、そこにいた女性に声をかけました。
その女性は青いワンピースが印象的な女性でした。
どうやら一人でいらっしゃっている様子だったので、声も掛けやすく、私たちは何の気なしにその女性に声を掛け、写真を撮ってもらうことにしたのです。
私はスマホを差し出して、「ここを押してください」とお願いしました。
すると、その女性は何も言わず、無言のままスマホを受け取りました。
普通ですと、その後「はいチーズ」などといった掛け声と一緒にシャッターを切ると思うのですが、その女性は何も言わず、ただ私たちの方にカメラを向けたまま静止しています。
『パシャリ』
突然シャッターが切られました。
本当に撮られたのかも分からない程に唐突で、私たちは一瞬たじろぎました。
(この人、なんか…おかしいよね?)
などと、彼女とコソコソ言っておりましたが、人様に撮ってもらっている以上、文句を言うこともなく、ただそっとスマホを返してもらいました。
確認すると、写真は意外と良い出来だったので、私たちは「ありがとうございます」と軽く頭を下げ、そそくさとその場を後にしました。
なんとなく気味の悪い印象の女性でしたが、楽しく彼女と旅を続けるうち、そんなことはすっかり忘れていました。
それからしばらくして、私は千葉でいつも通りの生活を続けていたある日のことでした。
その日、出かけようとマンションのロビーを通り過ぎて出入口に向かうと、オートロック扉の内側に、一人の女性が立っていました。
その女性は何を言うわけでもなく、ただこちらを見ています。
(ロックが解除できないのかな?)
そう思った私は、
「開けましょうか?」
と声をかけました。
しかし、その女性は何も言いません。
(・・・あ!?)
そこで私は気が付きました。
(・・・あの時の、女性だ)
そうです。その女性は、あの日光で写真を撮ってもらった、少し変わった感じのあの女性だったのです。
女性はあの時と同じ青いワンピース姿で、あの時と同じように私の声かけに一切反応を示しません。
その顔は私に向けられているようでしたが、視線は明らかに虚空を見つめていて、そんな状態でただマンションのオートロック扉の内側で立っているんです。
(何なんだよ、こいつは…)
気味が悪くなった私は、足早に出入り口に向かいその女性の横を通り過ぎようとしました。
その擦れ違いざまでした。
「…みつけた」
私に聞こえるか聞こえないかの、小さくか細い声でそう言ったのです。
一気に粟粒のような鳥肌が立ちました。
すぐにロックを解除し、慌てて外へ飛び出した私は、そのまま駅までの道を走りました。
(「見つけた」って、どういうことだよ…)
そんなことを思いながら、小一時間ほどで用事を済ませ、恐る恐るマンションに戻ってみると…
女の姿はなくなっていました。
それ以来、幸いその女の姿を見かけてはいません…
…ですが、見つけて終わりってことがあるのでしょうか?
そもそも「見つけた」って、どういう事なのでしょうか?
私を探していたという事なのでしょうか?
なぜ私を探していたのでしょうか?
私を見つけて何をしようとしているのか…
あの日以来、どこかからあの女に見られている気がして落ち着きません。
思わぬところで思わぬ人に出くわすことはありますが…
本当に思わぬ人に遭遇する時って、きっと自分は探されたんですよ…
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