【怖い話|実話】短編「父の秘密」人間が一番怖いと思った話(埼玉県)

アパート暮らし
image photo
投稿者:ちいちゃん さん(20代/女性/主婦)
体験場所:埼玉県K市

幼稚園に通っていた時に両親が離婚し、私は小学生の頃から父親と2人で埼玉県のK市でアパート暮らしをしていました。
裕福とは言えない家庭でしたが、人並みの生活は出来ていたと思います。

私が小学6年生の時のことです。
その日、クラブ活動が終わったあと、私は1人で下校していました。

いつもは途中まで一緒に帰る友達が居たのですが、その日は友達はクラブ活動後の集まりがあったため、私は1人で下校することになったのです。

クラブ活動後だったこともあり、この日の下校時刻はいつもより遅い夕方17時頃。冬ということもあって空はもう真っ暗でした。

小学校から自宅まで徒歩25分。
田舎町だったので街灯は少なく、真っ暗な中を1人で歩いて帰るのが怖かった私は早歩きで家路を急ぎました。

歩き始めて5分程が経過した頃、後ろに30代くらいの男性がいることに気が付きました。

明るい時間であればそれほど気になることではないのですが、その時は外が真っ暗だったこともあり、私は怖くて心臓がドキドキしました。

(連れ去られたらどうしよう…)

という被害妄想を抱きつつ、私はさっきよりも早足で家に向かいます。
気のせいなのか、後ろに居る男性も少し早歩きになったような気がしました。

田舎町の17時は基本的に人が居ません。みんな家でゆったりしている時間です。だから、もし何かあっても誰も私のことを見ていないし、周囲に助けてくれるような人も居ません。
そして私に気づく人もきっと居ないのです。
そう思えば思うほど怖さが増し、私の足取りは自然と小走りになっていました。

学校を出てから20分が経過し、もうすぐ家に着くというところで信号待ちをしている時、辺りを見回すと、さっきまで後ろに居た男性の姿はなくなっていました。

(私の考えすぎだったか…)

そう思い、私は小走りをやめていつものペースで歩いて帰りました。

家が見えてきたところで、ふと後ろを振り返ると、さっきの男性がまた私の後ろを歩いていました。

鳥肌が立ちました。

怖くなって家までダッシュし、鍵っ子だった私は急いで玄関の鍵を開けて家の中に入りました。

アパートの2階に住んでいた私は、部屋のカーテンを少し開けて外を見ました。

さっきの男性が外からこの部屋を見ていました。

恐怖のあまりカーテンを閉めることもできず、男性がその場から居なくなるまでずっと見ていました。

2時間後、父親が仕事から帰ってきました。

本当は今日あったことを父親に話したかったのですが、(心配をかけたくない…)という気持ちから、父親には話しませんでした。

それから1ヶ月程が経過しましたが、特に変わったことも怖い思いをすることもありませんでした。

でも、2ヶ月が経とうとしていた日曜日の朝8時頃、家のインターホンが鳴りました。

父親が仕事に行く準備をしていたので、私が玄関越しに「はーい!どちら様ですか?」と聞くと「市役所です。」と言うので、玄関を開けました。

すると玄関先にはスーツを着た2人の男性が立っていて、その片方の男性がすぐに玄関扉の隙間に足を引っかけたんです。

ドアに足を挟む
image photo

そして「お父さんと難しい話をしたいんだけど、お父さん居る?」と言われ、私は父親に呼びに行きました。

男性2人を見た父親が小さな声で「お前は奥の部屋に居なさい」と私に言いました。

子どもなりに普段とは違う父親の雰囲気を察し、私は父親の言うことを聞くふりをして、話し声が聞こえる玄関近くの部屋に居ました。

私がその部屋に居るのを父親は気づいたのか、男性2人に「外で話しませんか?」と言って出て行き、私には聞こえない場所で1時間も話をしていました。

やっと家の中に入ってきた父親に「市役所の人なんだって?」と聞くと、「大したことないから大丈夫だよ」とだけ言われました。

それから3日経ち、いつものように朝起きると、一緒に寝ていたはずの父親が居ませんでした。

普段は私が学校に行った後に出勤する父親ですが、私は「今日は仕事が早いのかな?」と思い、それほど気にはしませんでした。

そして置いてあった朝食を食べて私も学校に向かいました。

その日、学校から帰ってきて、3時間経っても父親はまだ帰って来ませんでした。

21時になっても父親は帰ってこず、私は冷蔵庫にある物を食べてその日は寝ました。

翌朝、父親はまだ帰ってきていませんでした。

この日は土曜日で学校は休みでした。
朝7時に伯母さん(父の兄の奥さん)から電話がきました。

「大丈夫?今から迎えに行くからね」とだけ言われ、30分後に伯母さんはやってきました。

すると「学校の物と着る物とかまとめて!」と言われ、何が何だか分からないまま私はおばさんに言われた通り荷物をまとめました。

荷物をまとめ終わると「今日はウチに泊るからね!」と言われ、おばさんの家に車で向かいました。

家に着くと父親のお兄さんから、

「お父さんはもう帰ってこないんだ。だから今日からは、ここから学校に行きなさい。」

「お父さんは、借金があったみたいでな…」

と言われたのです。

そう。父親は私を置いて1人で夜逃げ、もしくは借金取りに連れて行かれたんです。

きっとあの日、学校帰りに私の後を付けていた男性と、市役所を名乗って家に来た男性2人は借金取りだったのです。

それ以来、父親とは15年以上会っていませんが、体が不自由になった父親は施設で生活をしているという話を風の噂で聞きました。

これが私が体験した怖い話です。

父親が突然消える恐怖は、小学生には耐え難いものがありますよ。

コメント

タイトルとURLをコピーしました