【怖い話｜実話】短編「下半身」心霊怪談（北海道）

これは、今から15年ほど前の話です。

当時、北海道の札幌市近郊に住んでいた私は、車通勤の際に札幌市の米里という場所の道を通っていました。

その道は、北海道で有名な心霊スポット「米里の幽霊屋敷」と呼ばれる、不可解な不審死が多発したと噂される廃墟の割と近くを通る道路だったのですが、私が通勤に使っていた朝と夕方の時間帯は比較的明るかったので、そんなことを普段気にすることもなく走っていました。

それはちょうど今頃、秋の季節の頃です。
仕事の都合で帰りがいつもより遅くなったことがありました。

とは言え、札幌市内にはまだまだ営業中のお店もたくさんありますし、車の通りも多かったので、私は（今日も疲れたな～）と思いながら、いつも通り車で帰路に就きました。

車で走っていると、ちょうど道路の舗装工事が行われていて、『この先迂回してください』という標識に従い、私は前の車両に付いて迂回路に入りました。

そのまましばらく自宅方面に向かって走っていたのですが、前を走っていた車が1台、2台、3台と、右折や左折を繰り返し、次々と目の前から消えて行き、気付いた頃には前後に他の車はなく、その道路を走っているのは見える限りで私だけになっていました。

（普段走りなれてない道だから、一人は嫌だなぁ～）

そんなことを思いながら家路を急いでいると、ふと見上げた道路標識に『米里』の文字が見えました。

学生時代に『米里の幽霊屋敷』の事を友人から聞いて、その存在は知っていましたが、実際に行ったことはなく、（そういえばこの辺だよな～）と思いながら、仕事で疲れた体を早く休めたいと家路を急いでいました。

丁度そんな時、運転席から『米里の幽霊屋敷』が見えてきたんです。

壁は焼けただれ、真っ暗闇の中、不気味に1軒だけ取り残されたように建つ廃墟。

時間が遅いこともあって、少し恐怖を感じた私は車のスピードを上げ、急いでお化け屋敷前を通過し、そのまま無事に帰宅することができました。

次の日の事です。

朝になり、目覚まし時計のアラームを止めたのですが、前日の仕事の疲れもあってか、私は再びウトウトしてしまったようです。

どのくらい経ったのか、しばらくすると枕元で、

「ああ～忙しい」「ああ～忙しい」
「なんで私だけがこんなことになったのかしら」

というような独り言が聞こえてきました。

当時、私は母親と同居していたので、母親が寝坊しそうになっている私を起こしに来てくれたのだと思い目を開けた瞬間、私は体が凍り付きました。

そこにいたのは母親ではありませんでした。

目の前を動いていたのは喪服を着た女性。
しかも、その腰から下だけ。
それが忙しそうにして、私の部屋の中を行ったり来たりしていたのです。

本当にびっくりしたときは声も出ないもので、それを見ながら私は布団の上で黙って固まっていました。

そんな私に気が付いたのか、喪服を着た多分40代くらいの女性の下半身は、一度ピタッと立ち止まると、私の目の前をゆっくりと通ってクローゼットの中に消えて行きました。

頭の中が真っ白になったまま、私はしばらく放心していたのですが、ハッと気が付き時計を見ると既に8時を過ぎていたので、急いで支度をして仕事に向かいました。

一体あれは何だったのか？
喪服の女性は誰だったのか？
なぜ腰から下だけなのか？

今考えても、皆目見当も付きません。

強いて言うなら、前日に通り不気味に感じた『米里の幽霊屋敷』と関係があるのかもと思うのですが、全く関連性は不明です。

朝から奇妙な恐怖体験をした話でした。