体験場所:青森県H市 海沿いの道路
これは、私が8年前の夏に体験した出来事です。
その日、私は職場の同僚たちとバーベキューをしに、青森県H市にある海沿いのキャンプ場に行きました。
ひとしきり食事を終えた後は、花火をしたり、一部の人はお酒を飲んだり、楽しい時間を過ごしていました。
車で来ていたのでお酒は飲んではいなかった私も、周りの雰囲気に釣られ、かなりはしゃいでいたように思います。
すると唐突に、
「夏といえば、怖い話でしょ!」
と、同僚の一人が言いました。
盛り上りも最高潮を迎えていた宴の場で、反対する人など居るはずもなく、一人ずつ順番に自前の怖い話を披露することになりました。
私が披露したのは、『終わらないS字カーブ』という、地元では都市伝説的に語られているものなのですが、出どころは全く不明の話。
私たちが来ていた海岸に沿って走る道路から、車で街の方へ向かう途中、上りのS字カーブが数回続く道があります。
S字カーブの先には踏切があり、踏切を越えるとそこには住宅街が広がっているのですが、深夜のある時間にそのS字カーブを通ると、何度カーブを抜けても次のS字カーブが現れ、いつまでも踏切に辿り着くことが出来ない、という異次元ループ的な内容の話です。
地元では比較的知られた話で、ウケの方は期待していなかったのですが、お酒の効果もあってか同僚たちは楽しそうに話を聞いてくれました。
「お酒なくなってきたな。誰か買ってきてよ。」
怖い話も二週目に差し掛かろうとしていた時、同僚の一人がそう言いました。
車で来ていた人は他にもいましたが、お酒を飲んでいなかったのは私だけ。
仕方なく私が買い出しに行くことになったのですが…
「えぇ!?あのS字カーブ通らなきゃいけないじゃん!!地味に怖いんだけど…」
「大丈夫だって!まだそんな時間じゃないからw」
『終わらないS字カーブ』が出現する時間は夜の12時だとか夜中の2時だとか、様々な説がありましたが、その時はまだ11時を過ぎたばかり。
本気で怖がって行かないのは流石に興ざめだと思い、私は渋々車に乗り込みました。
とは言え、やっぱり怖いので、私はケータイのスピーカー機能を起動して、運転中もみんなと電話で話しながら行くことにしたのです。
すると、約5分ほど車を走らせた時でした。
もうすぐ例のS字カーブに差し掛かるというところで、電話の向こうから大爆笑が聞こえて来ました。
私との通話を忘れてしまうほど面白いことがあったのか、私が話しかけても誰も返事をしてくれません。
それどころか、急に電話が切れてしまったのです。
(・・・マジか!?)
焦る私を他所に、そのまま例のS字カーブが目前に迫ってきました。
(…カーブって、何回越えるんだっけ?)
そう思いながら、一つ目、二つ目と数えていくと、
(…五つ目、六つ目……マジ?こんなにあったっけ?…おかしくない?)
カーブを10回ほど通過した辺りで、もう数える余裕なんてなくなりました。
街灯もない月明りだけの道では、自分の車のライトだけが頼りです。
カーブの先はまったく見通しが利きません。
しかも、二台すれ違うのがやっとという道幅で、Uターンすることもできませんし、私は半泣きになりながら、ひたすらS字カーブを走り続けました。
一体どのくらい走った頃でしょうか・・・
不意にケータイが鳴りました。
「おい、いつまでかかってんだよ」
私の帰りが遅いことを心配してくれた同僚からでした。
「えっ、だって、カーブが…。あっ・・・」
その時、やっと目の前に踏切が見えたのでした。
車の時計は12時1分。
どうやら、ようやく私は『終わらないS字カーブ』を解放されたようでした。
後日、私の他に『終わらないS字カーブ』の体験者はいないか、友人や知人に聴きまくって探し回りました。
どうしても、誰か信じてくれる人に私の体験を話したかったのです。
結果、体験したという人は見つからなかったのですが、体験者の話を聞いたことがあるという人を見つけることが出来ました。
その人から詳しい話を聞いてみると、その体験者と私の間には、ある共通点があることが分かったのです。
実際に体験する直前、その体験者も私同様に、例のS字カーブの話を誰かにしていたそうなのです。
私も同僚の前で『終わらないS字カーブ』の話をした直後の出来事でした…
ただ、その後も他の人から話を聞いて調査を続けるうちに、それに付随するような条件もあるようで、『”あえて”、怪談話をしてから行っても、何も起こらない』らしいのです。
肝試しのような形で、これから行こうという前提で話しても効果はないらしく、あくまで偶然話した直後にS字カーブを通りかかると怪異が発生する、ようなのですが…
結局、本当のところは分かりません。
ただ、あの体験以来、私は夜に海沿いを走らないように注意しています。
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